何でこんな事になっているのか、俺には全く解らない。
「あん、あっ…、はぁん。」
鼻から息が漏れる。まるで女のような喘ぎは紛れもなく自分のものだ。かつては俺の下で気持ちいいと乱れる女の声だった筈なのに、何故自分が男の下で喘がなければならない。
「何を考えてるの、折角オレが突っ込んでやってるんだからさ、締めたり動いたりもっと奉仕しなよ。」
「い、やだ、こんなの、もう。」
ぐいと腰が進められ、カリがそこを擦った瞬間に俺の全身が痺れて頭の中が弾けた。
「嫌なんて言わせない。ほら、感じちゃってるでしょ。」
言い返せない程の快感が四肢を痙攣させる。もう抑制がきかない。
繰り返す突き上げで俺の体が上へずり上がり、ぺニスが最奥まで届かない気がして俺はそのしなやかな腰に脚を絡めた。
角度が変わり出し入れが上手くいくのだろう、良くできたと軽く唇を舐められた。
「んあっ、あん。」
触れるだけでまた快感が襲い、ひときわ高い声になってしまった。
のけぞった頭の、視線の先には逆さまに青空が見えた。四角い窓に切り取られた、絵のように綺麗な青空。
真っ昼間から窓を全開にして、ベランダには布団を干してあるから行為は畳の上で。
丈夫だから擦れて肌を傷付ける事はないが、それでも少し痛い。
「よそ見しないの。」
顎を掴まれ、息が苦しくて開けた口からうごめく舌が入る。熱い、気持ち悪い。
舌を避ければ余計に追って絡められる。唾液が口の中に溢れ、しかし飲み込む気はない。顎から首へ伝い、汗と共に流れ落ちた。
俺が道具ならばアナルだけ使えばいいのに、何故こいつは女を抱くように俺を丁寧に扱うのか。
「なん、で、」
俺の問いは独り言で終わる。肉を打つ音と二人分の荒い息に消されてしまうからだ。

ああもう、どうでもいい。
イキタイ。

ぺニスを求め、俺は脚を曲げ胸に引き寄せた。アナルの口は上を向き、より深く根元まで繋がった。無意識にきゅうと締め付けた事が頭上で吐かれた息によって解った。
俺の膝に手を置き膝立ちのまま注挿を繰り返す男の、白銀の髪からは汗の粒が俺に滴り落ちる。

どれだけ長い時間繋がり続けるのだろう。部屋に入る陽が作る影は、行為を始めた時と反対の向きを指している。
そろそろ俺も体力的に限界を迎えそうだ。快感を拾う神経は戦闘時より鋭いが、体は怠くてこれでは一歩も歩けないだろう。
こいつのぺニスも怒張の具合が僅かに違う。この一回で今日は終わりだ。
本人も理解しているのか突き上げがひときわ激しくなり、俺も一気に追い上げられる。
俺のぺニスは緩く立ち上がりかけのまま。先走りが僅かに零れるだけで、そこから白濁が出る気配はない。
俺は、アナルだけでイクように飼い慣らされたのだ。俺達二人の関係を知っている奴らもこれは知らない。
なあ、俺はまるきり女のような思考になりつつあるんだよ。男に欲情し、抱かれたいとケツが疼く。

ああ、熱い、イク、イクッ。
後ろだけで上り詰めると暫くさざ波が続く。ぺニスからの放出は一過性の嵐の波だが、これは舟で揺られるように継続し、やがて凪いでいく。
どっちがいいとか聞かれても、女には御無沙汰すぎて忘れてしまった。俺は黙るしかない。
「あんたはさ、もうオンナなんだよね。この際性転換しちゃわない?」
ふざけた笑いに殴り付けてやろうと腕を振り上げたが、手首を掴まれ捻られた。力の差は今の体の位置そのままだ。
「…それもいいな、そしたら堂々と腕を組んで歩ける。」
「え? 何の事?」
驚いて目を向いたこいつにそろそろ教えてやろうか。俺を捨てる切っ掛けになるかもしれない。
「カカシを離さない名器の味を確かめさせろ。」
「え、」
「子どもに触るな変態教師。」
「それ何。」
「カカシの弱味を握ってるから側に居られるんでしょ。とかね、言われてますから。」
「いつから。」
「女として生きても楽しいでしょうねえ。」
「いつからだっ!」
無視したら何故か怒鳴る。煩いなあ、関係ないだろ俺だけの事だ。

あんまり騒ぐから少し話してやったら、こいつ泣き出した。感情も言語も表現力ないって知ってたけど、俺の事ちゃんと一人の人間として好きなんだって何で誘導しなきゃ言えないんだ。
アカデミーに入れ直したい程馬鹿だ。
でもこいつの気持ちを知ったら今までの全てを赦しちまう俺も、それ以上に馬鹿だ。

「オレとイルカは愛し合ってるんだよね。」
取り敢えずこれだけを覚えさせた。明日からそう周りに吹聴してくれるとありがたい。

俺、一生あんたの面倒見てやるから。
うん、愛してるよ、カカシさん。
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