…苦しいよぅ。
独り言は白い息と共に昇っていった。誰かに話し掛けてもきっと、風邪でいためて掠れた声は聞こえないだろう。
教師にあるまじきこの失態。それに、中忍だろ、お前。
と心の声は自分につっこむ。
せっかくのクリスマス。本来の意味とはかけ離れた恋人達の行事となったが、世間の波に乗っかってイルカもご馳走を用意してカカシを待つ筈だった。
なのに。
二日前、アカデミーが冬休みに入って疲れが出たらしい。風邪の症状は悪化している。
今日は布団から起きる気力もない。もうすぐカカシが来るというのに。
暫くチャクラを集めて起き上がろうと頑張ってみたが、集中力はすぐ切れる。何度やっても無駄だった。

カカシさぁん。
声にならない想いを込めて呼んでみた。聞こえる筈もないだろうけど。
「ん、ここにいるよ。」
それでも聞こえるよと、大きな手がイルカの頭を撫でてくれる。

約束の時間に来てみればイルカはこの有り様で。イチャイチャしたかったけれど、二人きりの空間はとても甘い気がするから、こんな状況でも幸せだ。
カカシは目を細めていとおしそうに、熱が上がってきたらしくまどろむイルカを見ていた。
聖なる夜に二人きりでいられる事が嬉しい。忍びならまずあり得ないから。

クリスマスはまた来年もあるからね、とイルカの熱い頬に唇を寄せて、カカシはおやすみなさいと呟いた。そして毛布と羽毛布団を体に巻き付け、イルカの頭に自分の頭をこつんと寄せて座ったまま目を瞑った。

いつの間にか窓の外には音もなく白いぼたん雪。
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