昼下がりの任務受付にて。
にやにやした顔を抑えて(抑えたつもりで)、机の向こう側でこっそり写真のミニアルバムを開いている男が一人。
誰も来ないだろうと思っていたが、足音もなく近付く忍びが一人(忍びだから当たり前だが)。
「なぁに見てるの。」
驚いて立ち上がり足をふらつかせた男は、自分の座っていた椅子を倒しそれにつまづいて床に尻餅をついた。
「うわっ、あ、お疲れ様ですっ。」
それでも仕事を忘れず挨拶をする辺りは流石だが、アルバムを庇って倒れたというのは仕事以上に大切なのだろう、ちょっと困りものだ。
「これ見せてね。」
声を掛けた忍びが、落とさないように片手に持ち上げたまま座り込んでいる男の手からアルバムを取り上げて開いて見ると、中には一人の人物の様々なシチュエーションの隠し撮りをしたとみられる写真がびっしりと収められていた。
「なん、何だ、これ、これは。」
アルバムを持つ手が震える。
「いや、その、」
言い訳ができそうにない緊迫した空気が流れる。
「…俺、これ持ってない。」
はあ、と受付の男は口を開けたまま忍びを見上げる。てっきり怒られると思っていたので、拍子抜けしたのだ。
「焼き増ししてよ。」
「はたけ上忍、それは今日手に入れたばかりなんで、まだどこにも出回ってないんですよ。」
「だよねー、俺が知らないんだもの。じゃあ、これとこれと。」
尻をさすりながら立ち上がった男は、引き出しから注文書を取り出すと、写真の番号と枚数を書き込んでいった。
「十枚以上で一割引になりますが。」
すっかり商売人になって商談を始めた男に乗せられて、はたけカカシは次々と注文する。
「何見てるんですか、楽しそうですね。」
ひょいと覗き込んだのは、うみのイルカだった。
「ああぁ、何じゃい、これはぁ!」
菩薩の笑顔が夜叉に変わる。ついでに口調もどこかの組長風にドスがきいている。
「おんどれぁ、タマ取ったろうかい。」
イルカははすに構えて懐に手を入れた。
「イルカ先生、ヤクザ映画の見すぎですよぉ…。」
何を口答えしやがるんだ、と二人の男は三階の窓から投げ落とされ、イルカは交代で来た筈の受付から足早に立ち去ったのだった。
机の上にはアルバムが残されて。
職員室でお昼のお握りを頬張るイルカやら、体育の授業で校庭を走るイルカやら、受付で肘をついて居眠りするイルカやら、全て超望遠レンズで撮影された写真だった。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。