なんで師走は、ホントに忙しく走り回らにゃならんのだ。師匠走るって、誰が言ったんだよっ。
とイルカは、アカデミーの廊下を音もたてずに走っていた。普段生徒達に廊下を走るなと注意しているから自分も同じだと、しかしこの緊急事態では走るしかないから、せめて音だけでもたてずにと。
「おい怪我はっ、大丈夫かっ!」
と飛び込んだ先は医務室で、可愛い生徒が木から飛び降りた際に足首をひねったと聞いたのだ。
「あら、イルカ先生。そんなに慌てなくても大丈夫よ。」
中ではアカデミー付きの医療忍と生徒の男の子が、何やら和気あいあいと談笑していた。
ただの捻挫だと知ると、イルカは床に座り込んだ。
「何だよ、驚いただろうが。」
と引き攣った笑いでごまかすとイルカは立ち上がり、生徒を家に送るためにその子と自分の荷物を取りに戻った。
走る。急がねば。
カカシが年末を里ですごすために、そろそろイルカの家に戻るのだ。お帰りなさい、と出迎えたい一心でイルカは仕事を鬼のような顔で終わらせたというのに、帰り際にこんな事になるとは。
生徒をおぶってまた走る。ぎりぎり間に合うかという時間だ。
その生徒の家は、遠かった。クラスの中でも、一番遠くから通っているのだ。
一年分走ったかもしれない。とイルカはお礼に渡された手作りの惣菜を手に、帰り道に思った。
イルカの家とはアカデミーを挟んで反対方向だったのだ。
走る。
商店街を抜ける前に、わんわん泣いている小さな、まだ赤ちゃんといえるこどもをあやす店主らに声を掛けられてしまった。
「おう、イルカ先生、この子知らないか。」
「あ、うちのイツキの妹です。」
隣のクラスの生徒の妹だと判るとその子と、魚や野菜や肉の包みをイルカに渡してこれでよろしくな、とそそくさと逃げていく。
げ、と声に出すと腕の中の女の子は更に大声で泣き出した。慌ててあやして、また家に送るために走る。年子で最近下に生まれて親の目が行き届かず、日頃から一人で出歩いてしまうのだと聞いていたから、早く親に届けなければと余計に焦る。
幸い方向は一緒だ。
走る。
かなりの速さになり、それが気持ちいいのか女の子は楽しそうに笑い始めた。イルカもほっとする。
案の定、乳飲み子を抱えた母親が家の前でうろうろしていた。ご機嫌な女の子を見るとお世話になりまして、とまたお礼にとお菓子の包みを渡された。
走る。
まだカカシは帰っていなかった。夕飯の支度をしなければ、と思いながら取り敢えずいただいた包みを全て開いてみると、ご飯以外のおかずが揃っていた。
ささやかな、小さな、年の瀬の幸せ。
かちゃりと玄関の鍵が開けられた。カカシの帰宅だ。
「お帰りなさい。」
玄関までの短い距離を、イルカは走る。
とイルカは、アカデミーの廊下を音もたてずに走っていた。普段生徒達に廊下を走るなと注意しているから自分も同じだと、しかしこの緊急事態では走るしかないから、せめて音だけでもたてずにと。
「おい怪我はっ、大丈夫かっ!」
と飛び込んだ先は医務室で、可愛い生徒が木から飛び降りた際に足首をひねったと聞いたのだ。
「あら、イルカ先生。そんなに慌てなくても大丈夫よ。」
中ではアカデミー付きの医療忍と生徒の男の子が、何やら和気あいあいと談笑していた。
ただの捻挫だと知ると、イルカは床に座り込んだ。
「何だよ、驚いただろうが。」
と引き攣った笑いでごまかすとイルカは立ち上がり、生徒を家に送るためにその子と自分の荷物を取りに戻った。
走る。急がねば。
カカシが年末を里ですごすために、そろそろイルカの家に戻るのだ。お帰りなさい、と出迎えたい一心でイルカは仕事を鬼のような顔で終わらせたというのに、帰り際にこんな事になるとは。
生徒をおぶってまた走る。ぎりぎり間に合うかという時間だ。
その生徒の家は、遠かった。クラスの中でも、一番遠くから通っているのだ。
一年分走ったかもしれない。とイルカはお礼に渡された手作りの惣菜を手に、帰り道に思った。
イルカの家とはアカデミーを挟んで反対方向だったのだ。
走る。
商店街を抜ける前に、わんわん泣いている小さな、まだ赤ちゃんといえるこどもをあやす店主らに声を掛けられてしまった。
「おう、イルカ先生、この子知らないか。」
「あ、うちのイツキの妹です。」
隣のクラスの生徒の妹だと判るとその子と、魚や野菜や肉の包みをイルカに渡してこれでよろしくな、とそそくさと逃げていく。
げ、と声に出すと腕の中の女の子は更に大声で泣き出した。慌ててあやして、また家に送るために走る。年子で最近下に生まれて親の目が行き届かず、日頃から一人で出歩いてしまうのだと聞いていたから、早く親に届けなければと余計に焦る。
幸い方向は一緒だ。
走る。
かなりの速さになり、それが気持ちいいのか女の子は楽しそうに笑い始めた。イルカもほっとする。
案の定、乳飲み子を抱えた母親が家の前でうろうろしていた。ご機嫌な女の子を見るとお世話になりまして、とまたお礼にとお菓子の包みを渡された。
走る。
まだカカシは帰っていなかった。夕飯の支度をしなければ、と思いながら取り敢えずいただいた包みを全て開いてみると、ご飯以外のおかずが揃っていた。
ささやかな、小さな、年の瀬の幸せ。
かちゃりと玄関の鍵が開けられた。カカシの帰宅だ。
「お帰りなさい。」
玄関までの短い距離を、イルカは走る。
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