3 報告
「入籍しませんか。」
とカカシに言われたのは、プロポーズされてはいと返事をした直後のベッドの中だった。何をいきなり。
「いつ。」
と返したイルカもおかしいのだろうが、まさか直ぐとは思わなかったから、佳い日を選ぶのだろうとカレンダーに目をやった。大安は。
カカシが裸のままのイルカの胸の谷間に顔をうずめ、すりすりしながら今から行きましょうか、とほざくのにはイルカも呆れて、寝言は寝て言えと耳を引っ張ってやった。
そう簡単にはいかないでしょうと溜息をつけば、いいんですオレが決めたんですから、と更に言う。
頭をやられたかとイルカに額に手を当てられ、熱はないかと聞かれて貴女のお陰で熱は上がりっ放しです、とまた更に言うともっと熱を上げて死んでみたら、とイルカにベッドから蹴落とされる。
豪快で清々しい、と声を上げてカカシは笑った。そんな貴女が好きなんです、とベッドにはい上がってイルカを抱き締める。
もっと常識のある普通の人だと思っていたのに、この人は。溜息をつきながらイルカはカカシの白銀の髪を撫で付けていて、ふと悪戯を思いつく。自分の髪紐を探すと枕元にあった。あんまりにも色気がないと友達から贈られた赤い組紐である。
未だ自分にしがみつくカカシが顔を上げないのを確認して、イルカはにやりと笑う。また髪を撫で付ける振りをしながら、てっぺんの髪をひと掴み、素早く紐で縛る。丁寧に蝶結びにして仕上げると、イルカは出来上がり、と拳を握った。あー可愛いなあ、と仮にも上忍様に向かって思えるイルカは、火影の側で育ったから怖いもの知らずなのだ。
「今日はオレ、夕方までは暇なんです。もう昼近いから食事にでも行きませんか。」
とカカシがちょっと垂れ目がちの綺麗な顔で笑いかけて来るのでイルカはどきりとし、自分の頬が染まるのが判った。
こっくりとうなづきシャワーを借りて身支度を整えると、カカシは既に地味ながらもよく似合う私服に着替えていた。しかし頭の紐はそのままで、おいおい気付けよとイルカは喉を鳴らしてくつくつ笑う。何、と首を傾げるカカシにイルカはひいひいと笑い出し、鏡を指差した。振り返ったカカシはあっ、と口を開けたまま暫く鏡の中の自分を見詰めていたが、やったな、と呟きその紐でイルカの両手首を縛り、解けないように印を結んだ。
お返しですよ、とイルカを抱え上げ、カカシは勢いよく玄関の戸を蹴って外に出て歩き出す。
「何するんですか。」
とイルカはカカシの腕から逃れようとするが、男の力には勝てない。ましてこどもサイズの(実はカカシの部下であるこども達とたいして変わらない)イルカでは、子猫が暴れる程度なのか、カカシは全く気にしない。
「一体何処へ行くんですか。」
「火影様に結婚の報告に。」
と涼やかなカカシは歩の速度を上げ始めた。
一瞬カカシを見上げたイルカは再び暴れ出し、大きな声を出す。
「駄目です、駄目っ、まずいって、カカシ先生殺されるっ、降ろしてっ、お願いっ。」
終いには涙目になり暴れるイルカを平然と抱えながら、カカシはその目元に口づけ笑う。
「いや、だってオレも貴女も親いないから、報告は親代わりの火影様しかいないでしょう。ま、どうせゆうべの事で呼び出されるの解ってますから、先に言っちゃった方がいいんじゃないですかね。」
いやそうなんだけど、とイルカは大人しくなり俯く。必要以上に火影の事を気にするのは仕方ないのだ。だって、お前の婿は選んでやるから、と常々言われていて。幸せになって欲しいと、父母を思い出して悔やむように肩を落とされたら。
カカシだけは気をつけろ、と今でも毎日のように 念を押されているのをこの人は知らないだろうし。
だがカカシのあまり良くない噂は、噂でしかなかったと知った。のらりくらりとした態度も任務の時は誰よりも真剣だし、普段は照れ隠しでいい加減なだけなんだから、アタシ別に騙された訳じゃないんですよ火影様。
まがまがしい気を放つ火影の執務室の前で、カカシはイルカを降ろし手首から髪紐を解くと、その肩を大きな手で包み、全てオレの責任ですから貴女は何も言わないで、と少し緊張した声で扉を見詰めた。
その後半日程部屋の外に結界が張られたが、その理由は関係者の守秘義務となったという。
カカシがその夕からの任務をもうひとつ追加されて数日いなかった事と、イルカが具合が悪いからと火影と同席する仕事を休んだ事は無関係だったのかは、火影しか知らない。
「入籍しませんか。」
とカカシに言われたのは、プロポーズされてはいと返事をした直後のベッドの中だった。何をいきなり。
「いつ。」
と返したイルカもおかしいのだろうが、まさか直ぐとは思わなかったから、佳い日を選ぶのだろうとカレンダーに目をやった。大安は。
カカシが裸のままのイルカの胸の谷間に顔をうずめ、すりすりしながら今から行きましょうか、とほざくのにはイルカも呆れて、寝言は寝て言えと耳を引っ張ってやった。
そう簡単にはいかないでしょうと溜息をつけば、いいんですオレが決めたんですから、と更に言う。
頭をやられたかとイルカに額に手を当てられ、熱はないかと聞かれて貴女のお陰で熱は上がりっ放しです、とまた更に言うともっと熱を上げて死んでみたら、とイルカにベッドから蹴落とされる。
豪快で清々しい、と声を上げてカカシは笑った。そんな貴女が好きなんです、とベッドにはい上がってイルカを抱き締める。
もっと常識のある普通の人だと思っていたのに、この人は。溜息をつきながらイルカはカカシの白銀の髪を撫で付けていて、ふと悪戯を思いつく。自分の髪紐を探すと枕元にあった。あんまりにも色気がないと友達から贈られた赤い組紐である。
未だ自分にしがみつくカカシが顔を上げないのを確認して、イルカはにやりと笑う。また髪を撫で付ける振りをしながら、てっぺんの髪をひと掴み、素早く紐で縛る。丁寧に蝶結びにして仕上げると、イルカは出来上がり、と拳を握った。あー可愛いなあ、と仮にも上忍様に向かって思えるイルカは、火影の側で育ったから怖いもの知らずなのだ。
「今日はオレ、夕方までは暇なんです。もう昼近いから食事にでも行きませんか。」
とカカシがちょっと垂れ目がちの綺麗な顔で笑いかけて来るのでイルカはどきりとし、自分の頬が染まるのが判った。
こっくりとうなづきシャワーを借りて身支度を整えると、カカシは既に地味ながらもよく似合う私服に着替えていた。しかし頭の紐はそのままで、おいおい気付けよとイルカは喉を鳴らしてくつくつ笑う。何、と首を傾げるカカシにイルカはひいひいと笑い出し、鏡を指差した。振り返ったカカシはあっ、と口を開けたまま暫く鏡の中の自分を見詰めていたが、やったな、と呟きその紐でイルカの両手首を縛り、解けないように印を結んだ。
お返しですよ、とイルカを抱え上げ、カカシは勢いよく玄関の戸を蹴って外に出て歩き出す。
「何するんですか。」
とイルカはカカシの腕から逃れようとするが、男の力には勝てない。ましてこどもサイズの(実はカカシの部下であるこども達とたいして変わらない)イルカでは、子猫が暴れる程度なのか、カカシは全く気にしない。
「一体何処へ行くんですか。」
「火影様に結婚の報告に。」
と涼やかなカカシは歩の速度を上げ始めた。
一瞬カカシを見上げたイルカは再び暴れ出し、大きな声を出す。
「駄目です、駄目っ、まずいって、カカシ先生殺されるっ、降ろしてっ、お願いっ。」
終いには涙目になり暴れるイルカを平然と抱えながら、カカシはその目元に口づけ笑う。
「いや、だってオレも貴女も親いないから、報告は親代わりの火影様しかいないでしょう。ま、どうせゆうべの事で呼び出されるの解ってますから、先に言っちゃった方がいいんじゃないですかね。」
いやそうなんだけど、とイルカは大人しくなり俯く。必要以上に火影の事を気にするのは仕方ないのだ。だって、お前の婿は選んでやるから、と常々言われていて。幸せになって欲しいと、父母を思い出して悔やむように肩を落とされたら。
カカシだけは気をつけろ、と今でも毎日のように 念を押されているのをこの人は知らないだろうし。
だがカカシのあまり良くない噂は、噂でしかなかったと知った。のらりくらりとした態度も任務の時は誰よりも真剣だし、普段は照れ隠しでいい加減なだけなんだから、アタシ別に騙された訳じゃないんですよ火影様。
まがまがしい気を放つ火影の執務室の前で、カカシはイルカを降ろし手首から髪紐を解くと、その肩を大きな手で包み、全てオレの責任ですから貴女は何も言わないで、と少し緊張した声で扉を見詰めた。
その後半日程部屋の外に結界が張られたが、その理由は関係者の守秘義務となったという。
カカシがその夕からの任務をもうひとつ追加されて数日いなかった事と、イルカが具合が悪いからと火影と同席する仕事を休んだ事は無関係だったのかは、火影しか知らない。
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