21 月齢十九
オレの任務、というより復讐劇は思いの外呆気なく終わった。何日か掛かると思っていたから、全てが終わった明け方に梢に佇んでいたオレは、朝日が昇るのを見て力が抜けて座り込んでしまった。しかも、最後に使った写輪眼でチャクラ切れを起こしかけている。
里までは少し頑張って半日程掛かるが、今の状態では走り続けることは叶わない。かといってチャクラの回復まで此処に留まっていても時間が勿体無いから、ゆっくり帰るとするか。
イルカに会いたい、そしてこの腕に抱きたい。
オレは時間を掛けて木々の間を跳ぶことに決めた。此処は街道の直ぐ脇だが森が続き、里までは殆ど樹木は途切れない。頭の中で地図を描き順路を定めると、オレは慎重に枝を探して跳び始めた。
太陽は頭上高く昇り時間の経過を示しているが、漸く半分来た位かと見渡して一旦立ち止まる。兵糧丸を無理矢理口に押し込み、体をほぐして枝に腰掛けると、途端に疲れを感じた。チャクラはまだ残っているがこのまま使うのは危険だと、今日は何故か心がチリチリと知らせている。
少し休むかと、人目を避ける為登れるだけ上の枝に登り、隠れるように木に張り付いて体の力を抜いた。気休め程度だがチャクラも回復するだろう。写輪眼が体質に合わないのは解っているがこれは誰にもやれないし、オレが自分で選んだ道だから、文句は言わない。しかしもうこれだけ里に尽くしたのだから、これから先を自分の為だけに使おうが構わないだろうとも思う。正確には、イルカを守る為だけなのだが。この目を誰かにやってもきっと使えないだろう。オレだから使えるのだと自負しているし、確信もしている。
小一時間で少し体が軽くなり、ふっと息を吐いてまた歩を進めるべくオレは立ち上がる。イルカの元に戻る為に。
ゆっくりと、また枝の間を跳ぶ。街道の直ぐ脇だから所々の茶店や土産物屋の賑わいが聞こえる。こんな格好じゃなければイルカに土産の一つも買ってやれるのに。
里までもう少し、と云う所でオレに向かう気配を感じた。強くは無いが数が多い。今まで追って来なかったのだから、偶然オレを見付けたってとこだろうか。
ちょっと辛いかと思うが、来るなら片付けてやるだけだ。武器の数を確認。接近戦用の物を多めに持って来ていたが、今は体力的に無理があるので他に無いかと探って、イルカが持たせた特殊な札を見付けた。チャクラではない念が籠めてあるので足止め位には使えるって言っていたっけ。何がどう違うのか判らないが 。
枚数は相手の数と同じ位か。
オレの目の前の一人の足元にクナイで札を投げ、地面に貼付ける。夕方の濃い影の真ん中に刺さったそれは影と本体を縛り付けて動けないようにした。成る程影を操る家系の応用か。
相手は指一本動かせない。ただ、ほんの数分程度しか効果はないので急ぐ必要があるのだ。
オレは最小限の動きでそいつの息の根を止めた。それを見て一斉に動き出す、オレを狙う奴ら。抜け忍の集団か賞金稼ぎのようだ。
次の奴の、今度は影ではなく体を狙う。気付かれないように服に札を貼付けると、そいつの動きは動作の途中で止まり、すかさずオレは延髄を狙って細く尖らせたクナイを突き刺した。振り向くとそいつは崩れ落ち、地面に音を立ててひっくり返っていた。
流石に三人目からは警戒し始めたようだが、こうなったらさっさと片付けるに限る。続けざまに四人ばかり殺しひと息つくと、オレも動きが鈍ってきた事を知る。
隠れているのは一人、いや二人だ、畜生。
木の上ではかえって不利だと、オレは地面に降り出方を待つ。左右から二人同時に走るのが見えたが、もう写輪眼を使う余力も無いからオレは武器を使うことにして、まず一人体術でも倒せそうな奴に体を向けた。しつこい奴だ、オレの攻撃をかわし続けながら攻め込んでくる。そいつに気を取られた一瞬に、もう一人が千本の束を風を操り四方から放った。味方もろともオレを殺そうとしたらしい。咄嗟に目の前の男を盾にとったが、千本の数が多すぎた。何本かが手足に刺さる。毒を仕込んであるのか刺さった部分に異変を感じ、オレはこれ以上長引かせられないと、術を発動させた。
土遁。地が割れ盛り上がった土の塊が、最後の男を飲み込んで沈んでいく。そして地面は元通りに平面となって男の気は完全に途切れた。
同時にオレの力も抜け、うずくまるように地面に倒れ込んでしまった。急いで手持ちの毒消しを探り当て、震える手で口に入れる。噛み砕くのにも苦労するのは、毒の回りが早いせいだ。いくら耐性がついているとはいえ、今の体ではかなり無理がある。眠くなって来たのは毒のせいか、チャクラ切れか。
オレは最後の力で犬を一匹呼び出しイルカの元へ、と告げた。
霞む目に暗闇に昇り始めた月が見え、オレは長く息を吐いて目を閉じたのだった。
オレの任務、というより復讐劇は思いの外呆気なく終わった。何日か掛かると思っていたから、全てが終わった明け方に梢に佇んでいたオレは、朝日が昇るのを見て力が抜けて座り込んでしまった。しかも、最後に使った写輪眼でチャクラ切れを起こしかけている。
里までは少し頑張って半日程掛かるが、今の状態では走り続けることは叶わない。かといってチャクラの回復まで此処に留まっていても時間が勿体無いから、ゆっくり帰るとするか。
イルカに会いたい、そしてこの腕に抱きたい。
オレは時間を掛けて木々の間を跳ぶことに決めた。此処は街道の直ぐ脇だが森が続き、里までは殆ど樹木は途切れない。頭の中で地図を描き順路を定めると、オレは慎重に枝を探して跳び始めた。
太陽は頭上高く昇り時間の経過を示しているが、漸く半分来た位かと見渡して一旦立ち止まる。兵糧丸を無理矢理口に押し込み、体をほぐして枝に腰掛けると、途端に疲れを感じた。チャクラはまだ残っているがこのまま使うのは危険だと、今日は何故か心がチリチリと知らせている。
少し休むかと、人目を避ける為登れるだけ上の枝に登り、隠れるように木に張り付いて体の力を抜いた。気休め程度だがチャクラも回復するだろう。写輪眼が体質に合わないのは解っているがこれは誰にもやれないし、オレが自分で選んだ道だから、文句は言わない。しかしもうこれだけ里に尽くしたのだから、これから先を自分の為だけに使おうが構わないだろうとも思う。正確には、イルカを守る為だけなのだが。この目を誰かにやってもきっと使えないだろう。オレだから使えるのだと自負しているし、確信もしている。
小一時間で少し体が軽くなり、ふっと息を吐いてまた歩を進めるべくオレは立ち上がる。イルカの元に戻る為に。
ゆっくりと、また枝の間を跳ぶ。街道の直ぐ脇だから所々の茶店や土産物屋の賑わいが聞こえる。こんな格好じゃなければイルカに土産の一つも買ってやれるのに。
里までもう少し、と云う所でオレに向かう気配を感じた。強くは無いが数が多い。今まで追って来なかったのだから、偶然オレを見付けたってとこだろうか。
ちょっと辛いかと思うが、来るなら片付けてやるだけだ。武器の数を確認。接近戦用の物を多めに持って来ていたが、今は体力的に無理があるので他に無いかと探って、イルカが持たせた特殊な札を見付けた。チャクラではない念が籠めてあるので足止め位には使えるって言っていたっけ。何がどう違うのか判らないが 。
枚数は相手の数と同じ位か。
オレの目の前の一人の足元にクナイで札を投げ、地面に貼付ける。夕方の濃い影の真ん中に刺さったそれは影と本体を縛り付けて動けないようにした。成る程影を操る家系の応用か。
相手は指一本動かせない。ただ、ほんの数分程度しか効果はないので急ぐ必要があるのだ。
オレは最小限の動きでそいつの息の根を止めた。それを見て一斉に動き出す、オレを狙う奴ら。抜け忍の集団か賞金稼ぎのようだ。
次の奴の、今度は影ではなく体を狙う。気付かれないように服に札を貼付けると、そいつの動きは動作の途中で止まり、すかさずオレは延髄を狙って細く尖らせたクナイを突き刺した。振り向くとそいつは崩れ落ち、地面に音を立ててひっくり返っていた。
流石に三人目からは警戒し始めたようだが、こうなったらさっさと片付けるに限る。続けざまに四人ばかり殺しひと息つくと、オレも動きが鈍ってきた事を知る。
隠れているのは一人、いや二人だ、畜生。
木の上ではかえって不利だと、オレは地面に降り出方を待つ。左右から二人同時に走るのが見えたが、もう写輪眼を使う余力も無いからオレは武器を使うことにして、まず一人体術でも倒せそうな奴に体を向けた。しつこい奴だ、オレの攻撃をかわし続けながら攻め込んでくる。そいつに気を取られた一瞬に、もう一人が千本の束を風を操り四方から放った。味方もろともオレを殺そうとしたらしい。咄嗟に目の前の男を盾にとったが、千本の数が多すぎた。何本かが手足に刺さる。毒を仕込んであるのか刺さった部分に異変を感じ、オレはこれ以上長引かせられないと、術を発動させた。
土遁。地が割れ盛り上がった土の塊が、最後の男を飲み込んで沈んでいく。そして地面は元通りに平面となって男の気は完全に途切れた。
同時にオレの力も抜け、うずくまるように地面に倒れ込んでしまった。急いで手持ちの毒消しを探り当て、震える手で口に入れる。噛み砕くのにも苦労するのは、毒の回りが早いせいだ。いくら耐性がついているとはいえ、今の体ではかなり無理がある。眠くなって来たのは毒のせいか、チャクラ切れか。
オレは最後の力で犬を一匹呼び出しイルカの元へ、と告げた。
霞む目に暗闇に昇り始めた月が見え、オレは長く息を吐いて目を閉じたのだった。
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