一
つまんないなあ、と上忍待機所でぴりぴりと殺気を振り撒きながら、当の本人はのんびりとしていた。
「おいよせ、いくら上忍だから死なないとはいえ、お前の気に倒れる奴も出るんだからな。」
カカシの長年の付き合いの上忍アスマは、笑いながら後ろを指さした。
隅ではまだ上忍としては新人の何人かが蹲っていた。
「ごめんなさいねえ、でも霧や雨の連中はもっときつい気を出して向かって来るから頑張んなさいよぉ。」
と言われては、面と向かって無能呼ばわりされた方がマシかもしれない。
「で、どうするんだ。」
とは、既にそのつまらない気分を払拭する何かが見付かったのだろうとアスマは聞いてやる。
子どものように、聞いてほしいと顔に書いてあるのだ。
「そんなに聞きたい? じゃ教えてあげる。」
オレね、初恋みたい。
ふざけんな、とアスマは吸いかけの煙草をカカシの顔に押し付けようとして、クナイで煙草の先を切られた。
あー勿体ない。と床に落ちて燻る煙草の先端を踏み消しアスマが笑う迄、何が起こったのか二人以外には見えなかっただろう。
「今更初恋かよ、百人切りの種馬が。」
「やだねー、向こうから誘うだけでしょ。それにオレは絶対孕ませない。」
ソファに寝転び、エロ本をひらひらさせたカカシの言う事は真実だ。
先ず顔は晒さない。部屋には光は一切入れず女に目隠しをする。
媚薬を使おうとするくのいちは寝る前に追い出し、二度目はない。
床の中でも毒を仕掛けられたら、と唇は合わせた事もない。
そして必ず女は後ろ向きにし、カカシは片手に刃物を持つ。女の絶頂なんか待つ間もなく自分が欲を満たせば終わりで、それも必ずゴムを装着し女の膣には殺精子ゼリーを突っ込ませてから、という徹底振りだ。
だがこれだけ面倒な男だというのに、誘いは後を絶たないのは何故か。
一穴主義のアスマは傍観者で、カカシを男として羨ましいとは思わない。愛する女と抱き合う喜びの方が遥かに大きいと気付いたからだ。
しかしどれだけ愛を説こうとも、今までのカカシには愛の意味が解らなかった。それがどうだ。
初恋、などと口にしてふざける。新しい遊びかと更に聞いてみれば顔が変わる。
「オレさあ、気になるコがいるんだよ。知ってるでしょ、アスマはよく。」
うちのガキ達の先生。
え、とアスマは驚いた。カカシが上忍師として見ている下忍の、アカデミー時代の恩師を指しているのか。
イルカはやめろ、と掠れた声が出た。妹のように陰で大事にしていたのだから、こんな鬼畜に喰われては堪らない。殺すぞ、と言うのは当たり前だ。
けれどカカシは聞きはしないだろう。敵を追い詰めた時と同じ目になっている。
こうなっては目的を遂げるまで諦めない事は、アスマは解りすぎているのだ。けれど。
「傷付けたらどうなるか、親父と俺がいるんだってよく覚えておけよ。」
火影は老いてもカカシより強いのだから、と言っておかねばならない。それほどイルカが可愛いのだ。
「ああ、そうだね。」
と言うカカシにはどこまで理解しているのか、表面上は平静でイライラしてくる。
「でもねオレは遊びじゃないからね、イルカを見るたびドキドキするなんて、これは立派に恋だろ?」
「あーまあ、そうだが。」
自覚はあるんだな、とアスマは少し安心する。
取り敢えず様子は見ておこうと、煙草の煙を溜め息と共に長く吐いた。
「じゃあアスマに言ったんだから、誘っていいよね。」
とカカシは浮き浮きしながらイルカを探しに出て行った。
昼過ぎの中途半端な時間に、イルカが何処にいるのかカカシは知らない。どうせ待機だから暇だし、探すのも楽しいとまず本業のアカデミーの職員室を覗いてみた。
「お忙しい所をすみません、イルカ先生は何処にいますか。」
猫被りは得意だ。それにオレの味方に付けておけば何かと役に立つ。と上忍はたけカカシの気さくな一面を押し出した。
打算的だがカカシにしては正攻法だと言える。
「あ、うみの先生は授業ですが、もうすぐ戻ります。」
窓際の一番大きな机に教頭と書かれた札が置いてあり、そこに座る髪の薄い年配の男が立ち上がった。
何か不手際でも、と眉を寄せてカカシに近付くが、カカシは違いますと笑って丁寧に頭を下げた。
「アカデミーで部下の修得した技の事が知りたくて。ゆっくりお話をした事もありませんでしたし。」
三人の部下の内サスケとナルトは曰く付きだから無理もない、と教頭は思った。しかしそんな事でカカシは悩んじゃいない。修業は割合順調で、少し纏まりには欠けるが確実に進歩しているのだ。
だが誤解してくれた方が事は進めやすいかもしれない。こじつけでも会う理由になるのだから。
カカシは勧められるまま来客用のソファに座った。
つまんないなあ、と上忍待機所でぴりぴりと殺気を振り撒きながら、当の本人はのんびりとしていた。
「おいよせ、いくら上忍だから死なないとはいえ、お前の気に倒れる奴も出るんだからな。」
カカシの長年の付き合いの上忍アスマは、笑いながら後ろを指さした。
隅ではまだ上忍としては新人の何人かが蹲っていた。
「ごめんなさいねえ、でも霧や雨の連中はもっときつい気を出して向かって来るから頑張んなさいよぉ。」
と言われては、面と向かって無能呼ばわりされた方がマシかもしれない。
「で、どうするんだ。」
とは、既にそのつまらない気分を払拭する何かが見付かったのだろうとアスマは聞いてやる。
子どものように、聞いてほしいと顔に書いてあるのだ。
「そんなに聞きたい? じゃ教えてあげる。」
オレね、初恋みたい。
ふざけんな、とアスマは吸いかけの煙草をカカシの顔に押し付けようとして、クナイで煙草の先を切られた。
あー勿体ない。と床に落ちて燻る煙草の先端を踏み消しアスマが笑う迄、何が起こったのか二人以外には見えなかっただろう。
「今更初恋かよ、百人切りの種馬が。」
「やだねー、向こうから誘うだけでしょ。それにオレは絶対孕ませない。」
ソファに寝転び、エロ本をひらひらさせたカカシの言う事は真実だ。
先ず顔は晒さない。部屋には光は一切入れず女に目隠しをする。
媚薬を使おうとするくのいちは寝る前に追い出し、二度目はない。
床の中でも毒を仕掛けられたら、と唇は合わせた事もない。
そして必ず女は後ろ向きにし、カカシは片手に刃物を持つ。女の絶頂なんか待つ間もなく自分が欲を満たせば終わりで、それも必ずゴムを装着し女の膣には殺精子ゼリーを突っ込ませてから、という徹底振りだ。
だがこれだけ面倒な男だというのに、誘いは後を絶たないのは何故か。
一穴主義のアスマは傍観者で、カカシを男として羨ましいとは思わない。愛する女と抱き合う喜びの方が遥かに大きいと気付いたからだ。
しかしどれだけ愛を説こうとも、今までのカカシには愛の意味が解らなかった。それがどうだ。
初恋、などと口にしてふざける。新しい遊びかと更に聞いてみれば顔が変わる。
「オレさあ、気になるコがいるんだよ。知ってるでしょ、アスマはよく。」
うちのガキ達の先生。
え、とアスマは驚いた。カカシが上忍師として見ている下忍の、アカデミー時代の恩師を指しているのか。
イルカはやめろ、と掠れた声が出た。妹のように陰で大事にしていたのだから、こんな鬼畜に喰われては堪らない。殺すぞ、と言うのは当たり前だ。
けれどカカシは聞きはしないだろう。敵を追い詰めた時と同じ目になっている。
こうなっては目的を遂げるまで諦めない事は、アスマは解りすぎているのだ。けれど。
「傷付けたらどうなるか、親父と俺がいるんだってよく覚えておけよ。」
火影は老いてもカカシより強いのだから、と言っておかねばならない。それほどイルカが可愛いのだ。
「ああ、そうだね。」
と言うカカシにはどこまで理解しているのか、表面上は平静でイライラしてくる。
「でもねオレは遊びじゃないからね、イルカを見るたびドキドキするなんて、これは立派に恋だろ?」
「あーまあ、そうだが。」
自覚はあるんだな、とアスマは少し安心する。
取り敢えず様子は見ておこうと、煙草の煙を溜め息と共に長く吐いた。
「じゃあアスマに言ったんだから、誘っていいよね。」
とカカシは浮き浮きしながらイルカを探しに出て行った。
昼過ぎの中途半端な時間に、イルカが何処にいるのかカカシは知らない。どうせ待機だから暇だし、探すのも楽しいとまず本業のアカデミーの職員室を覗いてみた。
「お忙しい所をすみません、イルカ先生は何処にいますか。」
猫被りは得意だ。それにオレの味方に付けておけば何かと役に立つ。と上忍はたけカカシの気さくな一面を押し出した。
打算的だがカカシにしては正攻法だと言える。
「あ、うみの先生は授業ですが、もうすぐ戻ります。」
窓際の一番大きな机に教頭と書かれた札が置いてあり、そこに座る髪の薄い年配の男が立ち上がった。
何か不手際でも、と眉を寄せてカカシに近付くが、カカシは違いますと笑って丁寧に頭を下げた。
「アカデミーで部下の修得した技の事が知りたくて。ゆっくりお話をした事もありませんでしたし。」
三人の部下の内サスケとナルトは曰く付きだから無理もない、と教頭は思った。しかしそんな事でカカシは悩んじゃいない。修業は割合順調で、少し纏まりには欠けるが確実に進歩しているのだ。
だが誤解してくれた方が事は進めやすいかもしれない。こじつけでも会う理由になるのだから。
カカシは勧められるまま来客用のソファに座った。
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