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貴方があの写輪眼のカカシだったの、と名前だけは聞いていた里一番と謳われる忍びを目の前にして、イルカは三年前の子どもらしいカカシを思い出して微笑んだ。
こんな顔してたの、とイルカの手が輪郭をなぞり男前ね、と笑おうとしたが声は震え、泣きそうになるのが自分でも解った。
泣かないで、とカカシはイルカの頬に両手を添えて、涙の浮かぶ右目に口付けた。
「三年前の、誕生日おめでとう。」
ゆっくりと左目の涙もすくい、口付けて
「二年前の、誕生日おめでとう。」
何をするのかと驚くイルカは、カカシの突然の行動に反応する事すら忘れていた。
「一年前の、誕生日おめでとう。」
とカカシは今度は鼻の頭に口付けると、ふと思い付いてそのままぺろりと舐めた。それにイルカが怯んだ隙に、カカシの片手は頭の後ろへ。そしてもう片手をイルカの腰に回し引き寄せる。
「イルカ先生、今年の分。誕生日おめでとう。」
目をつぶって下さい、と囁かれ、イルカは目を閉じた。カカシはその唇を啄むように軽く何度も口付けて、本当に会いたかったと耳たぶを噛む。息のあがりそうなイルカはただ黙ってカカシにしがみついていた。
「オレも拾って下さいね。」
目を見詰めて笑ったカカシに微笑みかえしてイルカは、もう拾っちゃったわよ、と言う。
名前の付けられなかった気持ちは恋だったのだと、イルカは気が付いた。
顔が判らなくたって、誰だか知らなくたって、構わないじゃない。私は確かにこの人に恋をしたのだから。
「貴方もね。もし私を落としたら誰かが拾っちゃうかもしれないのよ?」
冗談じゃない、とカカシは顔を強張らせて、じゃあオレのものだって印を付けとかなきゃねえ、とイルカに深く口付けた。
遥か上空でぴゅうと鳴く鳥は、もうカカシを呼ばない。
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