番外編
好み
イルカはカカシの顔を整っていると思う。が、顔に惚れた訳ではない。
かつてカカシの入院時に、初めて素顔を見せられた。
日に焼けにくい白い肌は、持って生まれた遺伝の結果。
眠そうにとろんとした垂れ気味の半眼は、任務の時には見開かれ鋭く見据えられる。
鼻筋は高くまっすぐで嫌みのない形。
その下の唇は薄く口角がきゅ、と上がって薄ら笑いにも見えるが綺麗なのだ。
口布をしていても輪郭は丸わかりだから、騒がれるのも理解できる。
混みあう受付に現れたカカシに、きゃあと黄色い声が上がるのをいまだに目にするのは、かなり、嫌だ。
これを世間ではいい男だと言うのか、とイルカは隣で眠るカカシの頭を撫でた。
カカシはイルカの顔つきは嫌いではないが好みではない、と思っていた。負けん気の強い挑発的な、忍びらしい女は周囲に溢れている。
イルカも教師らしく隙のないように顔を引き締めると、日焼けと額宛てに隠れるが化粧で化けたらモデル並みの整った顔だ。
だがイルカの崩れた笑顔は真逆に優しく、語る仕草も柔らかい。誰もが惚れられていると錯覚しそうだった。
目は瞳孔と光彩が同じくらい黒いので、恐いように大きく見える。可愛いと表現できるが、この目で見詰められたら生徒達は悪巧みも全て白状するだろう。実際カカシも後ろめたい事は隠せなかった。
今日も女に告白された。まだイルカと付き合い始めて数ヶ月、今ならまだ奪えると画策しているのだと、親切にもイルカに耳打ちしたアスマは楽しんでいた。
その結果、帰るなり正座させて無言でカカシを追い詰めていたのだ。
だがカカシは即座に断っている。結果から言えば心配はいらない。
けれど、アタシの見えない所で何があるかと思うと、とイルカは涙目だ。
それを言ったらカカシも受付のイルカが心配だ。こっそり手紙でも渡されて、呼び出されて拐われでもしたら。
いけない想像が頭の中を占めて、焦りにカカシはイルカを押し倒した。
事務を手伝いながら愚痴を溢すイルカに、綱手は大笑いした。
お前の好みはどんなのだ、と聞かれイルカは父ですと答えたが、綱手は体を震わせて笑い続ける。
カカシはよく似ているよと言うが、イルカには判らない。
カカシの父とイルカの父はとても気が合い、会えば酒に誘いあう仲だった。けれどわざわざお互いの予定を確かめてまで会うわけではなく、会えなければ仕方ないと。
だが受付で報告に一年振りに会って、その場で一年前の話の続きを始めた、という逸話を残す。
あー言われればそんな豪快な人だったかも。とイルカは朧気な記憶を辿った。
けれどカカシ親子が外見も中身もよく似ていると聞かされても、ふうんと流す他なかった。
その日その後で、カカシが綱手にナルトの修業について相談に来た。
綱手はイルカの話をして、ついでにカカシの記憶にない母の話をしてやった。
まだ今よりくの一が少なかった頃。相談相手もないイルカの母に、先輩として妊娠中の心得を説いていた。
女同士はつるむ事が多い。産着やらの買い物に、いや何もなくとも毎日のように出掛けていたのだと。
お互いに姉妹のような気持ちがあったのだろう。そしてたまにはお茶にと、年の近い綱手も誘われた事があったと。
やっぱり好みは似ていたよ。と綱手は懐かしそうにカカシを見た。
娘は父に似た人を、息子は母に似た人を選ぶんだってな。
好み
イルカはカカシの顔を整っていると思う。が、顔に惚れた訳ではない。
かつてカカシの入院時に、初めて素顔を見せられた。
日に焼けにくい白い肌は、持って生まれた遺伝の結果。
眠そうにとろんとした垂れ気味の半眼は、任務の時には見開かれ鋭く見据えられる。
鼻筋は高くまっすぐで嫌みのない形。
その下の唇は薄く口角がきゅ、と上がって薄ら笑いにも見えるが綺麗なのだ。
口布をしていても輪郭は丸わかりだから、騒がれるのも理解できる。
混みあう受付に現れたカカシに、きゃあと黄色い声が上がるのをいまだに目にするのは、かなり、嫌だ。
これを世間ではいい男だと言うのか、とイルカは隣で眠るカカシの頭を撫でた。
カカシはイルカの顔つきは嫌いではないが好みではない、と思っていた。負けん気の強い挑発的な、忍びらしい女は周囲に溢れている。
イルカも教師らしく隙のないように顔を引き締めると、日焼けと額宛てに隠れるが化粧で化けたらモデル並みの整った顔だ。
だがイルカの崩れた笑顔は真逆に優しく、語る仕草も柔らかい。誰もが惚れられていると錯覚しそうだった。
目は瞳孔と光彩が同じくらい黒いので、恐いように大きく見える。可愛いと表現できるが、この目で見詰められたら生徒達は悪巧みも全て白状するだろう。実際カカシも後ろめたい事は隠せなかった。
今日も女に告白された。まだイルカと付き合い始めて数ヶ月、今ならまだ奪えると画策しているのだと、親切にもイルカに耳打ちしたアスマは楽しんでいた。
その結果、帰るなり正座させて無言でカカシを追い詰めていたのだ。
だがカカシは即座に断っている。結果から言えば心配はいらない。
けれど、アタシの見えない所で何があるかと思うと、とイルカは涙目だ。
それを言ったらカカシも受付のイルカが心配だ。こっそり手紙でも渡されて、呼び出されて拐われでもしたら。
いけない想像が頭の中を占めて、焦りにカカシはイルカを押し倒した。
事務を手伝いながら愚痴を溢すイルカに、綱手は大笑いした。
お前の好みはどんなのだ、と聞かれイルカは父ですと答えたが、綱手は体を震わせて笑い続ける。
カカシはよく似ているよと言うが、イルカには判らない。
カカシの父とイルカの父はとても気が合い、会えば酒に誘いあう仲だった。けれどわざわざお互いの予定を確かめてまで会うわけではなく、会えなければ仕方ないと。
だが受付で報告に一年振りに会って、その場で一年前の話の続きを始めた、という逸話を残す。
あー言われればそんな豪快な人だったかも。とイルカは朧気な記憶を辿った。
けれどカカシ親子が外見も中身もよく似ていると聞かされても、ふうんと流す他なかった。
その日その後で、カカシが綱手にナルトの修業について相談に来た。
綱手はイルカの話をして、ついでにカカシの記憶にない母の話をしてやった。
まだ今よりくの一が少なかった頃。相談相手もないイルカの母に、先輩として妊娠中の心得を説いていた。
女同士はつるむ事が多い。産着やらの買い物に、いや何もなくとも毎日のように出掛けていたのだと。
お互いに姉妹のような気持ちがあったのだろう。そしてたまにはお茶にと、年の近い綱手も誘われた事があったと。
やっぱり好みは似ていたよ。と綱手は懐かしそうにカカシを見た。
娘は父に似た人を、息子は母に似た人を選ぶんだってな。
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