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雷雲が近付いてきたのに待機所は明かりも点けず暗いまま、そして人影はなくなっていた。
カカシ先生の腕に捕らわれていたアタシは、時計の針がカチリと正時で進んだ音に現実に戻り、行きますと言ったけれど通常営業の笑顔が作れなかった。
カカシ先生の腕を外しながら、この大きな温かい手を離したくないとアタシは未練がましく立ち上がれない。
カカシ先生はアタシだけのものではない。だから、任務から帰ってきてどこへ行こうがカカシ先生の自由だ。あの部屋に誰も来ないからって、カカシ先生が行く場所がないとは言えない。
アタシは何を求めているの。何故アスマ兄ちゃんではなく、仲間達の誰かでもなく、カカシ先生なの。
気付けばアタシは職員室にいた。無意識に授業の準備をしていたなんて習慣は恐ろしく、笑える。
アタシの顔色が悪いって、あんたこそ。ああ職員室の皆も聞いたんでしょ、何かが起こりそうだって。
教員も夜の鍛練が始まるらしい。アタシは後方支援になるけど、少しでも動けるように頑張らなきゃ。
体はあれから小康状態を保ち、何とかお使い程度の任務は走れている。時折予告もなく膝の力が抜けてしまうが、知られている範囲内の振りをしている。
ナルトが自来也様と帰ってくる。アタシはあの子に会いたくない。
暗部の人達が、朝イチの受付で元気でいると毎回少しだけ教えてくれる、それだけでいい。
「イルカ先生、久しぶり。」
油断してナルトに引きずる脚を見せてしまった。
町なかで会った彼は、アタシの背を僅かに抜いていた。もう抱き付いてくれないだろうと思っていたが、抱き付いてきた。いや、抱き締めてくれた。耳元でごめんと言ったのは、アタシの脚が自分のせいだと理解したからだろう。
一楽の誘いも断り堂々と歩く後ろ姿は、アタシが幼い頃に見た四代目火影を思い出させた。
両親が同時に任務に出る時は必ずどちらかが日帰りで、そう調整してくれていたのは四代目だった。アタシは一人っ子の習いで一日位は一人で留守番できたし、周りが忍びの家族ばかりだったから、当たり前のように友達の家を回って留守番し合っていた。
ふと思い出した。一度だけ、カカシ先生が来てくれた事を。まだアタシ達がアカデミーに入学する前、里に侵入者があってアタシの家で怖い思いをしながら皆で留守番していたのだ。
あれは任務だったのだろうけど、優しいお兄さんと可愛い忍犬に安心していられた。
雷雲が近付いてきたのに待機所は明かりも点けず暗いまま、そして人影はなくなっていた。
カカシ先生の腕に捕らわれていたアタシは、時計の針がカチリと正時で進んだ音に現実に戻り、行きますと言ったけれど通常営業の笑顔が作れなかった。
カカシ先生の腕を外しながら、この大きな温かい手を離したくないとアタシは未練がましく立ち上がれない。
カカシ先生はアタシだけのものではない。だから、任務から帰ってきてどこへ行こうがカカシ先生の自由だ。あの部屋に誰も来ないからって、カカシ先生が行く場所がないとは言えない。
アタシは何を求めているの。何故アスマ兄ちゃんではなく、仲間達の誰かでもなく、カカシ先生なの。
気付けばアタシは職員室にいた。無意識に授業の準備をしていたなんて習慣は恐ろしく、笑える。
アタシの顔色が悪いって、あんたこそ。ああ職員室の皆も聞いたんでしょ、何かが起こりそうだって。
教員も夜の鍛練が始まるらしい。アタシは後方支援になるけど、少しでも動けるように頑張らなきゃ。
体はあれから小康状態を保ち、何とかお使い程度の任務は走れている。時折予告もなく膝の力が抜けてしまうが、知られている範囲内の振りをしている。
ナルトが自来也様と帰ってくる。アタシはあの子に会いたくない。
暗部の人達が、朝イチの受付で元気でいると毎回少しだけ教えてくれる、それだけでいい。
「イルカ先生、久しぶり。」
油断してナルトに引きずる脚を見せてしまった。
町なかで会った彼は、アタシの背を僅かに抜いていた。もう抱き付いてくれないだろうと思っていたが、抱き付いてきた。いや、抱き締めてくれた。耳元でごめんと言ったのは、アタシの脚が自分のせいだと理解したからだろう。
一楽の誘いも断り堂々と歩く後ろ姿は、アタシが幼い頃に見た四代目火影を思い出させた。
両親が同時に任務に出る時は必ずどちらかが日帰りで、そう調整してくれていたのは四代目だった。アタシは一人っ子の習いで一日位は一人で留守番できたし、周りが忍びの家族ばかりだったから、当たり前のように友達の家を回って留守番し合っていた。
ふと思い出した。一度だけ、カカシ先生が来てくれた事を。まだアタシ達がアカデミーに入学する前、里に侵入者があってアタシの家で怖い思いをしながら皆で留守番していたのだ。
あれは任務だったのだろうけど、優しいお兄さんと可愛い忍犬に安心していられた。
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