にっこりと笑って、アタシは薄暗い天井付近に声を掛けた。
「ちょっとだけですよー。」
途端にわらわらと溢れる白い動物面の人達。わー十二支全部は初めて見た。あれ、それ以外も沢山あるんだ、凄い。
ここは火影部屋の更に先、セキュリティは万全だから上忍でも暗部でも許可なしには入れない角部屋。の筈なんだけど。
あー三代目、もしかしてお酒で懐柔されましたね。はいはいくそったれ、今日のアクシデントはこれね。
心中で毒づいた事は顔に出ていないと自信を持って、アタシはまた部屋の鍵を開ける。
一応暗部さんに結界を張ってもらい、ありったけの椅子やら座れそうな箱を出したが足りそうもない。悩んでいる内に整然と年功序列で席は決まり、あきらかに新人と判る数人は壁際に立ち並んだ。流石。
カカシ先生だとどの辺なんだろうと見回していたら、カカシはこの位置にいましたね、と真ん中の肘つきソファーに座る鼠面の人が自分の右を指した。
え、そこ、二番目…。
アタシ、カカシ先生の頭を撫でたりしたけど、この人達見てないよね。不敬罪なんて言わないよね。
焦りまくりのアタシを見つめる沢山の白い面。仕方ない、温かなお茶と、職員室に持って行く予定だった一口饅頭と五色あられの箱を進呈しよう。
で、と口火を切ったのは鼠面の人だった。カカシ先生の近況が知りたいと。見てれば判るんじゃないんですか、と聞き返したら上忍師になってからは彼らには理解できない事ばかりらしい。
確かに、生徒達も授業で経験して初めて理解するからね。
じゃあ下忍になって上忍師に付いた人は手を上げて。三人。嘘だろ。
じゃあアカデミーを卒業した人は。十人。半分はその前に暗部にスカウトされたんかい。
では知ってる人も復習の意味で、とアカデミーの仕組みと卒業後の身の振り方をひと通り教授して、ここまでで質問は、といつも通りに振ってしまった。あ、失礼しました。
けれどよく解りましたと大きな拍手で、アタシは少し恥ずかしい。気を取り直して上忍師の説明をして、カカシ先生の仕事ぶりを教えてあげた。
犬面の人がへー信じられない、と呟いて周りがどっと沸いた。あの人が子どもの世話をするなんてねえ、と隣の猿面の人に同意を求めれば一斉にざわめき始めたので、アタシは逆に皆さんに暗部時代のカカシ先生の様子を尋ねて、切なさに泣きそうになった。先日聞いた以上の壮絶な少年時代だったから。
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