うん、じゃなくてはい、だろうが。俺は上司だぞ、と何度諭したことか。
カカシは、ナルトの面倒を公私ともに何年も見ていたイルカを尊敬し始めていた。いや正確には、理屈屋のサクラにも臍曲がりのサスケにも負けない精神力の彼女は神か菩薩かとあがめたい程に、今の自分の状況を呪っていた。
任務が当日キャンセルとなり、修業をつけていたのだが喧嘩ばかりで朝から何も教えられなかった、暖かくのどかな昼下がり。
「こいつらに俺の言葉は通じてんのかねえ。」
目の前で繰り広げられる三つ巴の口喧嘩を止めるすべも持たず、カカシは青空を見上げていたが暫くしてあ、と言ったその人を振り向いて、三人の子どもの喧嘩は一瞬止まった。
頭上を旋回する白い小さな鳥は、カカシに単独の任務を告げていた。上忍師だからといって、そんな任務が入らない訳がない。
にやりと笑いラッキーと呟いて、カカシは任務に行ってくるねー、と手を振り消えた。
途端に子どもらは各々カカシを罵倒し、誰かに言い付けたくてその誰かを探し始めた。かといって他の上忍師は良く知らないし、迷惑が掛かりそうだと彼らにしては賢明な判断をしたのち、結局はイルカの元へ行くことにしたのだった。
先日もカカシにやたらと会いに行くなと言われたばかりだが、こんな事態をどうしたらいいのか対処法は教えてもらっていないから、聞くべきは恩師だ、と正当な理由を探した。
「でも今はまだ授業中じゃない?」
サクラの言葉にめげる事なく、ナルトはアカデミーの職員室を目指して歩いていた。
一日中でも待つのには慣れている、と言った小さな声はサクラの眉をしかめさせた。ああひと晩でも構わんな、とサスケの言葉を聞けば更に辛い。
もう十二、でもまだ十二。両親の庇護の元でぬくぬくと育ってきたあたしには考えられない苦労をこの二人はしてきたんだ。
こんな所でも競うように歩くナルトとサスケの背中に、サクラは明るく声を掛けた。
「ね、イルカ先生んちでご飯作れないかな。」
よく先生の帰りを待ちながら作ったよね、と。
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