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昔日
この一週間、毎日が目まぐるしかった。イルカはまだ年少組の面倒を見ていた方が楽だと、凝った肩を回して目をつむった。
「お母様ぁ、ここかなぁ。」
いきなりホナミが首筋のツボをその小さな指で思い切り突いたので、イルカは声も出せずに固まった。ホナミは二才にしてチャクラの部分コントロールが完璧に出来るため肩の凝りをほぐしてイルカを喜ばそうと思ったのだが、いかんせんチャクラ量の微調整までは出来ずに最大限放出してしまったのだ。
帯電したかと思った。とイルカは後でカカシに笑ったが、チャクラ量の少ないカカシにはとても羨ましかった。毎日の諜報活動は思ったよりチャクラを使うので、夕方にはこれから戦闘だと言われても夜通し戦い続ける自信はなかったのだ。
息子にチャクラを貰って戦うのかなぁ、と溜め息を付いたが、チャクラの受け渡しが出来る事自体が稀だとはカカシも知らなかったようだ。
上層部は既に調査済みだったが、結果は知らせていない。これからホナミが成長するに従ってそれがどう変化するか、実験でもあったのだ。ホナミがカカシにチャクラを渡し、ホナミのチャクラはその分減ったままなのかまた瞬時に作り出せるのか、カカシに渡ったチャクラ量は増えるか減るか、そして体に同化出来るのか。
おやじさんと奥さんは、晩酌しながら穏やかに笑っていた。早速風評の効果が出たのだと言う。
しかしカカシには実感出来ていない。何の動きも見られないと思っていたのだが、幾つかの商店が突然休業したのが証拠だとおやじさんは言うのだ。
「そいつらが敵方だ。」
この国のもんじゃないと判ってるが、普通に暮らしてる分には誰も何もしねえよ。と呟いておやじさんは酒を煽った。自分達も怪しまれてるのは承知だ、ただオレは此処に骨を埋める覚悟でいるから皆優しいんだ。
何を言っても慰めにもならない。これが草の忍びの役目だからだ。
きっついなあ、とカカシはおちょこの中の揺れる透明な液体を見詰めた。
イルカがカカシの側に寄り添う。私達には私達の役割がありますものね。ああそうだね、とイルカの優しい瞳の輝きにカカシは微笑んだ。
「お前、いい人見付けたな。」
おやじさんはかなり若い頃のカカシに絡まれた話をし出した。
カカシがまだ上忍になりたての任務で大隊の隊長に自分、副隊長にカカシで、木ノ葉の里に攻め入ろうとする他里の連合軍に向かおうとした時だ。作戦が手緩いとカカシに噛み付かれたおやじさんが結果を見てからもう一度来いと一喝し、終わってみればやはり結果は明らかだった。殺戮は好かん、とおやじさんは敵味方共になるべく被害を抑えた作戦を立てたのだ。早く終らせればいいってもんじゃない、と諭されたカカシは当時の彼にしては珍しく素直に謝ったという。
おやじさんとはそれきりだったし年を重ねて風貌も変わったから、カカシにも判らなかったのだ。
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