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十二月 その二
「では、会議を始める。サクサク行くぞ、付いて来い。」
と気合いを入れたのは教頭だった。
「本日は上忍の方々もわざわざ有り難うございます。」
直角に腰を折った先に居たのは眉毛と髭とその連れの女、つまり上忍師達だった。
何でこいつらも此処にいるのだろう、とカカシはぼうっと佇んでいた。
「では今年のクリスマス会について、まず確認します。各クラス、教室の飾り付けの準備は進んでいますね。生徒達へも話してますよね。」
と、先程イルカに会議のある事を告げた男が、職員達を見回して言う。
よし、では次。
「当日ですが、まず各クラスでおやつを配り、生徒の出し物によるお楽しみ会があります。その後大ホールに移動して全体で職員による出し物を見せて、また各クラスに戻ります。そして冬休みの注意等で解散。職員は片付けをして速やかに慰労会会場に集合、です。えー今年は上忍師の方々をお呼びして、全体会にて術を披露して頂く事に致しました。卒業と下忍認定試験に向けて、下忍となり上忍師の先生方に付くとこんな事も教えて頂けるのだと、実際に見て確かめて、頑張ろうと奮起して欲しいのです。また下級生達にも、早く卒業して一人前の忍びとなり、上忍をも目指すようにと具体的な目標を作ってやりたいと思うのです。何と言っても上忍の方の術など、私達でも任務以外で見られはしませんからね。いいクリスマスプレゼントになると思います。」
宜しくお願い致します、とやはり直角に腰を折り、上忍師の面々に礼をした。続いて他の職員も腰を折る。
ちょっとそこまでしなくても、と困ったように頭を掻いたり横を向いたりする彼等にくすりと笑い、イルカもずっと横に立った侭のカカシに同じように頭を下げた。やはり気まずそうに覆面を更に上へとずり上げているのが可笑しい。
再度教頭が前に出て、当日までの役割分担を告げる。
職員は全て何らかの役割を担う為、一人ずつ割り当てられていくが、イルカの番になり
「あー、イルカ先生は上忍師の先生方のお世話を頼みます。粗相のないように。」
とだけ言うと立ち去ろうとするので、慌てて引き留め聞き直す。
「だから、一緒にいてくれればいいんです、当日は。プログラムもお任せしますので、作っといて下さいね。一人十分程度、ホールの破壊は無しですよ。」
お願いしますね、と背を向けられ、反論する機会を失った。もう何を言っても無駄なんだと判っているから、息を大きく吐いて肩を落とす。
そうだよね、やっぱり上忍はどんなにいい人でも、付き合いづらいんだよね。
「イルカ、違うって。」
と進行統括の同僚がイルカの肩を叩き、耳元でこっそり言う。
あ、独り言が漏れてたみたい。
「逆だよ、お任せしても心配無いからだよ。俺も聞いた時は、いい加減だって抗議したよ。でもな、上の方だってちゃんと考えてくれてるんだ。上忍に命令は出来ないしな、お互いプライドもあるだろう。」
と最後は周囲に聞こえないように話す。
「だからお任せだ。」
ぽんぽんと気安く体中を叩かれるイルカを、カカシは間近で見る。
イルカ先生は自分が女として見られないのだ、とよく言っていた。しかしどうだ、こいつの目は確かに彼女を女として見ているじゃないか。近付き過ぎだぞ、とカカシは男を睨んでいた。
ぞくっ、と悪寒がしてイルカは振り返った。ふ、とカカシは目を反らす。
また、そんな顔をして。最近よく見るようになったカカシの眉間の皺と、遠くを見る眼差しは。何かをずっと考えているのは解るのだけれど、私には踏み込めないから。とイルカの眉間にも皺が刻まれているのには、本人は気付かない。
そんな二人を遠くから見ている上忍師達は、誰がどう見ても想い合ってるよなあ、と囁いたが邪魔をするかのように、男がイルカにちょっかいを掛けている。だがその男もイルカの事が好きなんだと解るから、困ってしまうのだ。
カカシはどうするんだろうな、と心配するのは、彼が身を引いてしまうかも知れないからだ。イルカが幸せならば、と里から消える事は充分に有り得る。
カカシっていい奴なんだもの応援したいじゃない、と言ってもライバルもいい奴みたいだし。結局はイルカが決める事なんじゃないかしら、と傍観することを決めたのは仕方がないだろう。
大まかな説明は終わった。後は動き出すだけだ。
イルカは上忍師達と共に、術の内容を決定しなければならない。
彼等の任務の合間を縫って、実演練習もお願いしてとなれば二週間では足りないかも、いやでも、この人達ならリハーサルもいらないかも。
ああ何だって教頭先生、私に大役を押し付けたんだ。
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