カカシとイルカが出会って半年以上、一目惚れだったんだろうなと周囲にすら判る寄り添い方に、既にそういった関係かとカカシに尋ねれば、まだ知り合いの域を出ないと情けなくうずくまる。お互いに愛は全身から溢れるのだが、あまりに愛しすぎてなかなか踏みきれないらしい。

「イルカ先生、クリスマスイブの夜は暇だったよな。」
数日前、受付に七班が勢揃いして報告に来たと思えばナルトが机に身を乗り出してイルカに尋ねた。
確かにアカデミーも冬休みに入っているので、日直という名目の留守番があるが、それも夕方五時までだ。その後は…何もない。
「悪かったね、はいはい暇ですよー。」
イルカはあかんべーをしてナルトに答えたが、くくっと笑う声にぱあっと顔を赤く染めた。
「こどもの喧嘩ですか。」
とカカシが腹筋が痛い、と腹の辺りを押さえて笑っている。
報告完了、受理しました、お疲れ様でした。と拗ねたように言えば、サクラもイルカ先生変わんないのねえ、と嬉しそうだ。むしろ変わらないで欲しい、と皆が思っている。卒業生にも優しい笑顔が、どれだけ任務で荒んだ心を癒してくれるか、この人は知らないのだろうけど、と。
「夜、家に行くから。」
サスケが珍しく前に出て、けれど照れ隠しにイルカのペンを持つ手元を見ながら言う。
「は?」
正常な反応だろう。主語がない、述語も不完全だ。
「…。」
助けを求める先はカカシだ。
にっこりと目を細める笑顔はイルカにだけ向けられる。三人の下忍の子らをちらと窺い、あのですね、と切り出した。
クリスマスイブの夜は徹夜でパーティーをしたい。もうアカデミーの生徒ではないのだから、誰にも咎められる事はない筈だ。唯一自宅通いのサクラは、女性教師のイルカの家なら、と許可がおりたのだ。
「という事で、」
「決定かい。」
カカシの説明の語尾へ言葉を被せれば、絶妙なツッコミだと隣の受付員が拍手をして、イルカはピースでどや顔になった。…ああまた乗せられた。
「いいですけど、その日はあたし、買い物も飾り付けもできませんよ。」
覆す決定打はないから了承はしたが、場所を提供する事しかできない。
鍵だけ貸していただけますか。とカカシは全てを任せろと優しい。では、とホルダーから合鍵を外しカカシの手に乗せた。
それはカカシの家の鍵と合わさってキーリングに納まった。自分がカカシのものになったような、嬉しさと恥ずかしさ。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。