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終章
 あ、お母さん。どうしたの、アカデミーに何かご用だったの?

―今日はお仕事だったのよ。授業は終わったの? じゃあ一緒に帰りましょう。

 うん、ねえねえお母さん、取材だったの? 今度は何の記事を書くの?

―あなたがお話ししてくれたでしょ、イルカ先生の事よ。

 えっ、じゃあ先生にあのお兄さんと結婚するって聞いたの?

―ううん、今日はまだよ。記事を書くための取材は一日じゃ終わらないの。沢山の人にお話しを聞かなきゃ新聞にはならないんだから。

 ふうん、大変なんだね。お母さん、ほら見て、先生のコイビトのお兄さん!

―あら本当、はたけ上忍だわ。今日は下忍の子達と別だったから、特別任務に行ってたのかしらね。

 ちがうよ、他の先生達がお話ししてたの、えーと何だっけ。あ、結婚する前のごあいさつだって言ってた。だからね、イルカ先生も、授業のない時間はずっとおでかけしてたんだよ。帰りの会には間に合ったけど。

―そう、やっぱりあの二人だと世間体も気にしなきゃいけないから大変よねえ。芸能人並の忙しさになるでしょうしね。

 あ、イルカ先生出て来た。もう帰るんだ、せんせ―

―駄目よ、声掛けちゃ。静かにして。

 何で? お母さん、あたし先生にさよならしたいのに。お兄さんにも。

―邪魔しちゃいけないの、あなたにも解るでしょ。

 …うん。あ、先生達手をつないだよ。お兄さんね、いつも先生のお迎えに来るんだよ。先生もお兄さんがお迎えに来るまで、ずっと待ってるんだ。一人で帰っちゃだめなんだって。

―そう…。あのお兄さんのお嫁さんになるって、凄く大変な事なのよね。イルカ先生だからきっと大丈夫だと思うけど。

 何が大変なの? 好きだから結婚するんだって、イルカ先生言ってたよ。それじゃだめなの? お父さんとお母さんもそうなんでしょ?

―そうよ、好きで好きで、ずうっとおじいさんとおばあさんになっても一緒にいようねって、約束したの。

 じゃあ、先生達も約束したんだよね。

―その約束の印が、イルカ先生の指輪なのよ。はたけ上忍は、イルカ先生をとっても大事にしてるでしょう。そうして全てから守る覚悟をしていて、守られるだけでなく包んであげて、本当に好きってそういう事なんだと思うわ。きっと、一生。

 お母さん、あたし解んないよ?

―あなたにも好きな人が出来たら解るわよ。だから、イルカ先生みたいに素敵な女の人になってね。
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