序章
 ねえお母さん、聞いて。今日ね、先生が泣いてたの。

―先生って、イルカ先生のこと?

 うん、あたしが帰る時、あたしね飼育係だから兎さんとか鳥さんとかの小屋の鍵を見てから帰るんだけど、校庭の大きな椅子に座ってたの。

―先生がそこで泣いてたの?

 うん。びっくりしちゃったんだけど、イルカ先生ね、お兄さんによしよしってされてたから大丈夫みたい。あたし、どうしよって思ってたら、そのお兄さんがバイバイって手を振ってくれたの。でね、内緒だよって。

―お兄さんって、アカデミーの先生?

 ううん、イルカ先生のコイビトだよ。いっつもねえ教室の窓から入って来たり、お昼の時に先生のお迎えに来たりすんの。

―なんて人か知ってる?

 うーんとね、名前聞いたんだけど忘れちゃった。えーっと、変な人。でもね、イルカ先生にはすっごく優しいんだ。いいなあ、コイビトって。

―お名前忘れちゃったならしょうがないけど、どんな人だか教えてくれるかなぁ? 髪の毛の色とか髪型とか、なんかこんな感じって判るだけ教えて。

 うん、あのね、背が高くてイルカ先生と同じお洋服着てて、髪の毛がおじいちゃんみたいに真っ白で、ぽーんて上に立ってるの。イルカ先生はすっごい強いんだって言ってたけど、うちのお父さんの方が強いんだよね、お母さん?

―その人の名前って、はたけカカシって言ってなかった?

 うーん、そうかも。よく解んないけど。ねえお母さんはあのお兄さんの事知ってるの?

―やだ大変。イルカ先生の恋人だって言ってたのよね、その人。ねえ、他に何か聞かなかった? よーく思い出して。

 えー解んないよお。んーとね、あ、今日職員室のお掃除当番だったの。学校のお掃除ってね、お昼休みの後にやるんだよ、お母さん知らないでしょう。

―いいから、それで?

 女の先生がいっぱいイルカ先生の回りに来ててね、凄く煩かったの。それでぇ、えーっとねえ、あ、指輪が何とかって聞こえたんだけど、煩くてよく解んなかった。他にはねえ、あ、お母さん何処行くの、あたしのお話し聞いてよお。

―あなたぁぁ、大変よ大変!はたけ上忍とイルカ先生がねえ――。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。