視線が絡む。気配がした、と振り向くと必ず目が合った。
ほんの一瞬、そしてどちらからともなく目を逸らす。そんな日々が続き、視線の交わる時間が少しずつ長くなった。そして、その回数も日毎に増えて。

夕暮れの道端で会ったのは、偶然か必然か。お互いに連れがいて、食事に行くところで。
皆顔見知りで、ならばと合流し居酒屋へ行く。そこは料理が評判の、小さいが心地良い店だった。
ほろ酔い加減で帰路に着く。
いつの間にか、カカシとイルカは並んで歩いていた。カカシの視線に気付いて、思わずカカシを見上げてしまった。
あ、だめ。目が離せない。

微かに赤い右の目尻に、酔いが残っているのが判る。イルカも同様に、いやそれ以上に酔って赤い筈だ。
間が持たなくて、仕方なくイルカはにっこりと笑った。カカシが立ち止まり口元を曝して笑い返したのを見て、イルカは驚きその顔を凝視した。
食事の間もマスクをしたままで、いつ口に入れているのか判らない程、素早く食べ物が消えていたのに。

「あら、いい男。」
酔っていれば何でも口に出せる。
「おや、いい女。」
カカシも同様だった。
「あたしに惚れると火傷するわよ、気をつけなさい。」
「火傷、してみたいな。」
「治らなくても知らないから。」
「たった今、オレの心に火が着いたよ。」
「全身火だるまにしてやろうかしら。」
「望むところだ。だけどあんたも一緒に燃えてもらうよ。火傷じゃ済まない位に。」

見つめ合いながら立ち止まったのは、カカシのアパートの前で。
連れがどうしたなど知ったことではない。と口の端で笑う。

カカシはイルカを抱き込むと鍵の掛かっていないドアを開けた。どうせ取られる物などないからね、と言いながら、閉めたドアを内側から施錠する。
「だけど、あんただけは取られたくない。」
イルカの頭を胸に押し付け、カカシは自分の匂いを擦り付けるかのようにその華奢な体を抱きしめた。大きな手は、やはり男のものだと今更のように認識し、イルカはほんの少し怖じけづいた。

ただの知り合いだと、少しだけ仲の良い男友達だと思っていた。色を含んだ気持ちなど一切無かった筈、と思い込んでいた。
何だかいきなり恥ずかしくなった。まずい、と心で舌打ちする。

このままじゃ、あたし、堕ちる。

強張った体にカカシは気付いた。馬鹿だね、何を躊躇うんだ。言っただろう、俺はあんたに身も心も焼き尽くされたいんだ。

一緒に堕ちて。

カカシはイルカの顎に手を掛け、上を向かせた。自分の顔がその目に写っている。
「オレだけを見て。」
その目に他の誰も写さないでくれ。
いつの間にかカカシの左目が開いていた。血のように赤い。
魅入られた、見入った。

お互いの顔しか写らない目。外せない視線。

「キスする時は目を閉じてよ。」
一瞬でも勿体ないわ。
そう掠れた声で囁くと、ずっと一緒だから、死ぬまで見てていいから、今は。とカカシは片手でイルカの瞼をおさえる。
見えない方が感じやすいでしょ、と吐息のような声がイルカの耳をくすぐる。
あぁ、と鼻から抜ける甘い声に、カカシは体を駆け巡る熱い疼きを抑え切れない。

靴を脱ぐ間も惜しくて、イルカの体をひょいと担ぐと大股にベッドまで歩く。
どさり、と落とされたイルカは笑いながら、カカシに向かって腕を伸ばした。
「嬉しい。」
「何が?」
イルカの腕に収まりながら、カカシはその服を脱がせる。
この体制ではなかなか難しいもんだな、と面倒な事はいささか苦手な男は、クナイで服を切り刻んだ。
ストレート過ぎるとは思うけど、情熱的で素敵だわ。とイルカは浮かぶ笑みを深くする。
ぷつりと音をたてて最後の布が切れ、イルカの体はもう被うものが何もない。目の前のカカシも全裸で、しかもイルカの上に跨がっていた。
目に入るのは、いきり立つ太く赤黒いもの。その根元は薄い色の縮れた毛が濃く生えている。ふとそこに隠れる対の丸い玉の入る袋に触れて、軽く転がし握ってみた。
「煽ってどうする気だ。俺に抱き潰されたいか。」
少し怒気の篭った低い声が、イルカの手を引っ込めさせた。
「ご…めんなさ、い。」
震える声に違う、我慢出来そうにないからだ、とカカシの眉が下がった。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。