６ 月齢五
良く晴れた、オレにとって素晴らしく気持ち良い朝だった。なんと云ってもあの馬鹿野郎がいないのだから。
しかし受付では、厳戒体制で今日は急を要する以外の低級任務は無いと言う。子ども達には家から極力出ないように言い渡し解散した。やたらとうろつくと殺されるかも、と一言添えて脅さなきゃナルトなんか遊び歩くに決まってる。
オレは上忍待機所での出番待ちと決め―要するに暇潰しだが―ソファに身を沈めると、アスマが誰にも聞こえないようにお前かと聞いて来る。だって邪魔だったんだよと笑ってやるとだろうなーと同意し、かなり派手に殺ったなぁそんなに欝陶しかったかと、オレの執着の度合いを確かめた。触るは撫でるは、しかもオレより先に犯ろうってのはどうよと殺気ばりばりのオレの頭を叩き、そりゃいけねーよなとニヤリと笑った。でもあの人はオレだけのもの。今度だけはお前に回さないよと睨めば、アスマはおっかねーとわざと震えて紅に助けを求めた。
紅はあの強姦魔を始末してくれて有り難いと、オレにイルカへの協力を約束した。被害者が訴えないので捕まえられなかったとは、犯り得じゃねえかとちょっと羨ましいか。そしてやはりイルカとは女同士の方がいい事もあるだろうし、紅の申し出は好都合だった。
毎日ガキの相手ばかりで暇でさぁと二人は嬉しそうだが、余り首を突っ込んでくれるなよな。
ところでそのあんたの彼女がね、と紅が柳眉をしかめてそいつの件で事情聴取されてんのよと言う。お前も呼ばれるぞと言われても、ばれない自信はあるからイルカの心配だけしてりゃいいんだって。
しかし、どれだけかかるのか。三時間過ぎたと言って、紅はイルカの様子を見に行ってくれた。またそれからかなりの時間を要して、二人が帰って来たのは昼をまわってからだった。
イビキが言うのにはね、その男実は色々と怪しかったんですって。イルカには普段の様子も聞きたかったらしくて、あと少しって言いながら今までかかったの、と判って気が抜けた。しかしイルカは同僚がまさか、とショックを隠せないようだ。入れ代わりにオレが呼ばれて小一時間、役に立たない世間話をしてやった。
オレがいない間に大分落ち着いたのか、しかしイルカは同僚の事ばかりを考えている。死んだ人間がイルカの心を占めるなんて、許せない。オレの事だけ考えてればいいのに。そうだ、記憶から邪魔な奴を消してしまえばいいんだ。
なんだ簡単な事じゃないか。
いつかイルカを手に入れたら、オレの事だけで一杯にしてやる。
また一つ楽しみが出来たと、オレはイルカに笑い掛けた。
カカシはね、イルカが心配だってお昼も食べず、ずうっと此処でうろうろしてたのよ。お腹空いてるでしょ、どうせもう帰るだけなら二人で食べに行きなさいよ。と紅の後押しが有り難い。
職員室での待機だけで帰ってもいいのだけど、とイルカは躊躇う。
アスマと紅はイルカと飲みに行く約束を取り付けて、オレ達を無理矢理送り出した。よしよし、今度好きなだけ奢ってやるからな、感謝するぜと帰り際に手を振り部屋を後にした。
昼下がりの閑散とした道を並んで歩く。イルカはオレの左にいるので、わざと抑揚の無い声でこっちは死角なんですけど、と言うと慌てて立ち止まって身を竦め、ごめんなさいと下を向く。オレは屈んでイルカに目線を合わせ、左を許すのはあなただけですよと優しい声を出し、特別を匂わせた。驚き目を大きく見開いたイルカに、今日は疲れたでしょうと頬に手を添え、このところ大変でしたからねと抱き寄せて、髪を撫で背中を叩いてやる。顔がオレの肩口に埋もれ、いい香りが鼻を擽るのでオレの理性は少しばかり飛んだ。唇で耳たぶを軽くはんでも気が付かない。そろりと耳に沿って唇を移動させ、舌を穴に入れようかとしたところでオレは我に還った。
―まだだ。と頭に響く声に空を見上げ溜息を吐くと、まだ明るいのに月が見えていた。あ、と漏れた声にイルカも見上げて、カカシ先生といる時には月を見る事が多いですね、とふんわりと微笑む。
今は上弦の少し前で、昼間昇って夕方暗くなって月が見える頃にはもう沈む寸前なんです。ほら山の上に降りるのももう少しです、と指で軌跡を追って段々昇る時間が遅くなるんですよと説明してくれた。
満月の時には夕方昇って朝沈むんです。
じゃあその沈む満月をあなたと見てみたいですね、と言っても一晩中月を見てても退屈ですがと、言葉の意味に気が付かないようだ。
月にはねぇ、見られてもいるんですよね。こんな所もね。
オレは口元の布を下ろし、触れるか触れないかの口づけを落として、月はどう思うでしょうかねえとくっと喉で笑って。
イルカが深く考えないように気を逸らす。ぐずぐずしてると店が混み始めちゃいますよと、オレはイルカの手を取り歩き出した。
良く晴れた、オレにとって素晴らしく気持ち良い朝だった。なんと云ってもあの馬鹿野郎がいないのだから。
しかし受付では、厳戒体制で今日は急を要する以外の低級任務は無いと言う。子ども達には家から極力出ないように言い渡し解散した。やたらとうろつくと殺されるかも、と一言添えて脅さなきゃナルトなんか遊び歩くに決まってる。
オレは上忍待機所での出番待ちと決め―要するに暇潰しだが―ソファに身を沈めると、アスマが誰にも聞こえないようにお前かと聞いて来る。だって邪魔だったんだよと笑ってやるとだろうなーと同意し、かなり派手に殺ったなぁそんなに欝陶しかったかと、オレの執着の度合いを確かめた。触るは撫でるは、しかもオレより先に犯ろうってのはどうよと殺気ばりばりのオレの頭を叩き、そりゃいけねーよなとニヤリと笑った。でもあの人はオレだけのもの。今度だけはお前に回さないよと睨めば、アスマはおっかねーとわざと震えて紅に助けを求めた。
紅はあの強姦魔を始末してくれて有り難いと、オレにイルカへの協力を約束した。被害者が訴えないので捕まえられなかったとは、犯り得じゃねえかとちょっと羨ましいか。そしてやはりイルカとは女同士の方がいい事もあるだろうし、紅の申し出は好都合だった。
毎日ガキの相手ばかりで暇でさぁと二人は嬉しそうだが、余り首を突っ込んでくれるなよな。
ところでそのあんたの彼女がね、と紅が柳眉をしかめてそいつの件で事情聴取されてんのよと言う。お前も呼ばれるぞと言われても、ばれない自信はあるからイルカの心配だけしてりゃいいんだって。
しかし、どれだけかかるのか。三時間過ぎたと言って、紅はイルカの様子を見に行ってくれた。またそれからかなりの時間を要して、二人が帰って来たのは昼をまわってからだった。
イビキが言うのにはね、その男実は色々と怪しかったんですって。イルカには普段の様子も聞きたかったらしくて、あと少しって言いながら今までかかったの、と判って気が抜けた。しかしイルカは同僚がまさか、とショックを隠せないようだ。入れ代わりにオレが呼ばれて小一時間、役に立たない世間話をしてやった。
オレがいない間に大分落ち着いたのか、しかしイルカは同僚の事ばかりを考えている。死んだ人間がイルカの心を占めるなんて、許せない。オレの事だけ考えてればいいのに。そうだ、記憶から邪魔な奴を消してしまえばいいんだ。
なんだ簡単な事じゃないか。
いつかイルカを手に入れたら、オレの事だけで一杯にしてやる。
また一つ楽しみが出来たと、オレはイルカに笑い掛けた。
カカシはね、イルカが心配だってお昼も食べず、ずうっと此処でうろうろしてたのよ。お腹空いてるでしょ、どうせもう帰るだけなら二人で食べに行きなさいよ。と紅の後押しが有り難い。
職員室での待機だけで帰ってもいいのだけど、とイルカは躊躇う。
アスマと紅はイルカと飲みに行く約束を取り付けて、オレ達を無理矢理送り出した。よしよし、今度好きなだけ奢ってやるからな、感謝するぜと帰り際に手を振り部屋を後にした。
昼下がりの閑散とした道を並んで歩く。イルカはオレの左にいるので、わざと抑揚の無い声でこっちは死角なんですけど、と言うと慌てて立ち止まって身を竦め、ごめんなさいと下を向く。オレは屈んでイルカに目線を合わせ、左を許すのはあなただけですよと優しい声を出し、特別を匂わせた。驚き目を大きく見開いたイルカに、今日は疲れたでしょうと頬に手を添え、このところ大変でしたからねと抱き寄せて、髪を撫で背中を叩いてやる。顔がオレの肩口に埋もれ、いい香りが鼻を擽るのでオレの理性は少しばかり飛んだ。唇で耳たぶを軽くはんでも気が付かない。そろりと耳に沿って唇を移動させ、舌を穴に入れようかとしたところでオレは我に還った。
―まだだ。と頭に響く声に空を見上げ溜息を吐くと、まだ明るいのに月が見えていた。あ、と漏れた声にイルカも見上げて、カカシ先生といる時には月を見る事が多いですね、とふんわりと微笑む。
今は上弦の少し前で、昼間昇って夕方暗くなって月が見える頃にはもう沈む寸前なんです。ほら山の上に降りるのももう少しです、と指で軌跡を追って段々昇る時間が遅くなるんですよと説明してくれた。
満月の時には夕方昇って朝沈むんです。
じゃあその沈む満月をあなたと見てみたいですね、と言っても一晩中月を見てても退屈ですがと、言葉の意味に気が付かないようだ。
月にはねぇ、見られてもいるんですよね。こんな所もね。
オレは口元の布を下ろし、触れるか触れないかの口づけを落として、月はどう思うでしょうかねえとくっと喉で笑って。
イルカが深く考えないように気を逸らす。ぐずぐずしてると店が混み始めちゃいますよと、オレはイルカの手を取り歩き出した。
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