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作戦
へえ、とイルカと奥さんはカカシの顔を覗き込んだ。恥ずかしさのあまりカカシは口布を引き上げようとしたが、それがない事に気が付き更に慌て、白い顔が真っ赤に染まった。
「やんちゃだったとは色んな人に聞きましたけど、そんな可愛い事もあったんですねぇ。」
イルカは笑いを堪え、肩を震わせた。
散歩に行くか、とカカシはこども達を両手に抱き上げるがお腹が空いたと言われて、羞恥のやり場がなくなった事を知る。いつまで話のネタにされるのかと、カカシの溜め息は果てしなく長い。
いよいよ本格的に動くんですね。とイルカはカカシから話を逸らせるために、おやじさんに明日からの予定を聞いた。
「しかしよ、このガキンチョ達は肝が据わってるよなぁ。」
おやじさんが笑えばホナミが胡座の右膝に、ミナミが左膝に茶碗を抱えてちょこんと座った。人見知りしやすいホナミが先に行動した事に、イルカは少しばかり驚いた。
「こら、邪魔しないの。」
いいって、とおやじさんは笑って二人の頭をぐりぐりと撫で回した。ひと時の休息はこれで終わりだと皆解っているようだった。
明日からどうすればいいんですか、とカカシがおやじさんに聞く声は少し重い。オレに聞くなよお前の仕事だろうが、と言いながらもおやじさんはこの国の地図を畳に広げて幾つか戦略を説明し始めた。
あの時もこんな風に、隊長は被害を最小限に止める為の方法を何通り用意していたのだろう―。カカシは自然に微笑んでいる事に、自分でも気が付かなかった。
具体的には大隊が動き始めた振りをし、相手に悟られていないと思いつつ慎重な作戦を取っている、と思わせるというのだ。少々ややこしいが、相手がこちらの作戦を見抜いたという設定が前提の作戦だった。木ノ葉が動いた、という噂は既に流しておいた。
「ホナミ、迷子になればいいんだね。」
「ミナミが手を離したらどっか行っちゃって、だから追っかけるのね。」
きっかけとして小さな二人が囮になる、非常に危険な作戦だったが、それを選んだのは彼ら自身だった。
「ボク達捕まったら、ちょっと泣いた方がいいよね。」
でもなぁ、とカカシとイルカは顔を見合わせた。この子らが勢い余って力を出さなきゃいいけど、と心配するのはそっちの方か。
「二人が捕まった瞬間でいいのよね。そいつがどうなったのか自分でも判らない内に捕縛してやってよ。」
何と無理な注文を、とも思ったが、カカシも大事なこども達に手を出した奴などに手加減をするつもりなどない。後は縛り上げて全て聞き出してやる、と鼻息も荒い。
まあそれで話すようなやわな奴を使う訳もないだろうが、少しでも可能性があるなら試してみればそこが突破口になるかもしれない。薬も幻術も使えるんだし、と笑っている奥さんは拷問部の始祖だとおやじさんがこっそりイルカに教えてくれた。人は見掛けによらない。
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