『わたしが一番欲しいもの 』のカカシ視点

任務が終わったらさっさと帰ればいいのに、下忍の子ども達は全員残って何やら相談している。
それを横目にオレも帰ろうとしたら、サクラに呼びつけられて…言われた事がよく解らないんだけど。
イルカ先生に届けてって、その名前に酷くどきっとしたけど気付かれなかったよな…あーひやひやした。

ああそりゃ、誕生日の贈り物を届けるくらいはできるけど。
ん? 手紙だけ?
行けば解るって、はいはい行くけど追い払うみたいで何か嫌だね。
何を企んでるんだろうか、明日問い詰めてやろう。

「イルカ先生、誕生日ですってね。おめでとうございます。子ども達から手紙を預かってきました。」
イルカ先生に会うまで、オレは何回落ち着けと自分に言い聞かせてきたか。自然な笑顔になってる筈だ。
玄関先でイルカ先生はオレを見て少し狼狽えて、慌てて差し出された手紙を広げた。さっと目を通し、先生は一瞬固まった。
視線をオレとその手紙の間を何度か往復させた後に、ぐるんと音がする位オレから顔を背け自分の尻を見るのかと思う程後ろを向いてしまう。何故か先生の耳とうなじが真っ赤になっていた。
オレはイルカ先生の手から落ちた手紙を拾い、それを読んで内容に疑問をもった。
皆からの贈り物を受け取ってくださいって、オレは何も渡されていないのに。
…オレからも何かあげたいって思ってたけど、何がいいか悩んで結局決まらなかったものな。オレ自身をあげます、なんて言ったら確実にドン引きだし。

「カカシ先生、本当にいいんですか?」
胸に手をあて深く息をして、イルカ先生がそっとオレに問う。
何が、と首を傾げたオレを見詰めるイルカ先生の潤む目に、どきりとオレの心臓が跳ねた。
何だかむらっとして、不味いとオレは目をそらせる。その際に玄関内側の靴箱の上にある、身だしなみ用だと思われる鏡に映るオレを見たのだが。
…オレの頭に真っ赤なリボンが結ばれていた。
丸い花のような塊が頭頂部に鎮座して、四方に何本もリボンがひらひらたなびいているのだ。オレは贈り物じゃないだろ…え?
贈り物…?
あいつら! ちくしょう感謝するぞ!

「はい、ただし返品不可ですから!」
猫背を正してしゃちほこばったオレにくすりと笑うと、イルカ先生はオレの手を引き中に入れてくれた。
「一生分のお祝いをいただきました。」
「馬鹿言わないで。毎年イルカ先生が欲しいものをあげるよ。」
「じゃあ、毎年あなたをねだります。」

ずっと、死ぬまでオレの全てをあげるから。
今年はあなたと愛し合い始めたオレ、十年後は十年あなたを愛し続けたオレ。
あなたが一番欲しいものを。
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