本気なら覚悟を見せろって。
あの後、綱手様にこっそり言われちゃった。

あんたは何で笑うんだ。
男同士で番うなぞ無意味だ、別れろ。と俺達は今日言われて来たばかりじゃないか。
年寄り達もふざけた話をしやがる。

ね、別れたりしないよね。
幸薄い俺達。死んでも別れない、そう言ってやったら沈んだ顔のまま、あんたはまた笑った。


ことりとテーブルに置かれた二つの小瓶。

飲んで。
笑いながら泣いているような、縋る目に俺は瓶の蓋を開けた。

一緒に飲み干した。ぐうと喉が鳴る。
熱い、痛い。
遅れてあんたもうずくまる。
伸ばされた手を握り、俺は意識を手放した。

不意に戻った意識に、何だよ心中じゃなかったんだ、と俺は思ったんだが。
二人で病室に並んで寝ていた。

馬鹿な事をしたなと、綱手さまの声がした。
いやお前達には幸せか。

何の事ですか。
俺は本当に解らなかった。

お前達を引き離して、それぞれ結婚させるつもりだったらしいじゃないか。
あのくそじじいとばばあが。

はあ。と俺は綱手さまの怒りをどう治めようかと思っていたのだ。いつものつもりで。

起きたかカカシ。
尋問される気はあるか。

はい、今此処で。

簡潔に。お前達は二人で呼び出されて、別れろと言われたのだな。

はい、結婚して子を成せと仰られました。
その後綱手様に、覚悟を見せろとオレは言われました。
イルカも別れる気はないと言ったので、これが、覚悟です。
死ぬのはいつでもできますからね。

解った。お前の勝ちだ。
二人とも子種を失ったから、女との結婚の意味はなくなった。
おめでとう、と言ってもいいだろうかね。


ああそうなんだ、死ななくてよかった。
あんたの覚悟は受け取った、俺の覚悟も見せてやる。


これ使おうと盗んできたんだ、と巻物をあんたに見せたら何だよその笑顔。
一緒に死ぬんだ、禁術なんだぞ。
だって、あんたの死に顔なんか見たくないじゃないか。


お揃い。と心臓の上の呪印を撫でるあんたが愛しくて、俺はぎゅうぎゅう抱き締めるんだ。
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