まあそれはもう関係がない事なので、と邪気のない顔で波花アオがカカシに笑いかけるとカカシは漸くアオを睨むことをやめた。
「僕と父は、この十年あまりで完全にその里の民となりました。役回りは父は全くの一般人、僕も落ちこぼれで忍びになりきれなかった役立たずです。」
「うん、三代目も外交上の問題はなかったから下手に動けないって時々零してらした。」
「色々悪かったなイルカ、サギも。」
お互い様だろうと二人は同時にアオの肩や背中を叩いた。それはとてもよく音が響いて、アオは本気で苦痛に顔を歪めたのだった。
痛みを堪えて笑いながら座り込むとアオは話を続ける。
「はたけ上忍が怪しむとおり、僕がこの事件の首謀者です。」
一歩擦り足で前に出ようとしたカカシに手のひらを向けて制し、火影様の命ですとアオは声高にカカシを牽制する。広げた手のひらには火影の公用印の模様がすうっと光りだした。
カカシは目を見張りアオにすまないと頭を下げて謝罪した。そりゃいきなり床下から出てくるわ首謀者だなんて言えばなあ、とイルカは口には出さずカカシの素早い反射的な行動を否定しなかった。
「.......サギは、何故今まで、」
脇に立つサギに僅かに顔を向け口籠もるカカシに、サギがうーんと苦笑いをしながら頭を搔く。説明が難しい。けれど言わなければカカシは納得しないだろう。
「ああその、ひとことで言えばおれは囮だ。」
木ノ葉の忍びが事件に関与したかもしれないという嫌疑で、人の目を自分に向けておく。別に協力者でも犯人でも構わなかった。
本気で心配しだろうカカシには悪いと思ったが外からは木ノ葉の里を狙う者達を、内からはそれに従属する反逆者を同時に炙り出す計画だったから誰にも漏らすわけにはいかなかった。葛藤で食欲が落ちた程だ。
アオは下忍にもなれなかった放蕩息子が改心したという設定で、ふらりと父親の元にやってきてその里でひっそりと暮らしていた。
「忍び里とは言ってもその里自体がひとつの、名もない国だったんですよ。だから商人で一般人である父は用心し、一度も子供も使えるような簡単な忍術さえ使いませんでした。」
カカシに向けて肩を竦め両手を広げて見せる。おどけてはいるが、草として完璧に演じられる父への尊敬は誰にも見てとれた。
「息子の僕はチャクラの量が多いからと勧められて木ノ葉のアカデミーに入学したけれど、結局卒業できただけで引導を渡されて父に引き取られた事になっています。」
アオは一応仕事はするが、ふらっと出掛けてしまういい加減な面も見せるようにしていた。
父の指示で若者の動向を探る。何やら一部がきな臭いという、一族でも上位の実力の父を信じて。
そして四年か五年程前の事、アオの近くに素行の良くない若者達が集まり始めた。適度に放蕩息子の名残りの一面を見せてやれば、そこに親近感を持ったらしい。
気付けば集団と呼べる程の人数になって、調子づいたかどこか忍びの里を襲おうかとの話が出始めていた。
アオが父に相談すれば他里の抜け忍も混じっているなら引き渡して恩を売る事ができると、自分の周囲の面々の中にいる抜け忍の一覧を投げて寄こした。諜報に動いた気配すらなかった父親に改めて敬意を払う。
集まってくるのは力不足でなかなか上には上がれない、結果素行不良で一族から絶縁され抜け忍となった者が意外と多かった。あとは力を過信して待遇に不満を持つ者。
朱に交われば赤くなる。集団心理も働いて、彼らは世の中が悪い自分達は正義だと曲がった思想を持つようになっていった。
好都合だ。良い流れになりゆっくりとアオを頂点に立たせるように仕向けた。素行に問題があったから下忍にもなれなかっだけ、実力は中忍以上だと謙虚にしながらも格の違いを見せ付けてやる。そうして半年あまりを掛け集団の統領となると、父を通じて木ノ葉の里に連絡を取った。
「アオが木の葉を襲うように仕向け、おれは同時にこちら側の不穏分子を炙り出していたんだ。」
サギの言う不穏分子の中には、あの研究室の二人も含まれている。なかなか見付け出せずに一般人四人の犠牲者を出してしまった事は自分のミスだと、眉間に皺を寄せてぎゅうと目を瞑った。
それは防ぎようもなかった、その事件があったからこそそれ以上の犠牲者が出ずにすんだとカカシがサギの両肩を掴む手に力を籠める。
自らを木ノ葉の不穏分子とし、以前からアオと連絡を取り合っていた木ノ葉の者に唆されて木ノ葉の中でのボスとなった。行方不明になったのは三代目火影の指示だ。それからカカシを動かし更にイルカにも手を出す。
カカシには暗部と上忍を動かせるし、イルカには目立たないが里内を守る事務系の者達を動かせるからだ。
「ま、正確には皆お前らの為に勝手に動いてくれるからな。二人ともどれだけ人望が厚いんだよ。」
カカシとイルカを指してサギは呆れたような顔をした。
「僕と父は、この十年あまりで完全にその里の民となりました。役回りは父は全くの一般人、僕も落ちこぼれで忍びになりきれなかった役立たずです。」
「うん、三代目も外交上の問題はなかったから下手に動けないって時々零してらした。」
「色々悪かったなイルカ、サギも。」
お互い様だろうと二人は同時にアオの肩や背中を叩いた。それはとてもよく音が響いて、アオは本気で苦痛に顔を歪めたのだった。
痛みを堪えて笑いながら座り込むとアオは話を続ける。
「はたけ上忍が怪しむとおり、僕がこの事件の首謀者です。」
一歩擦り足で前に出ようとしたカカシに手のひらを向けて制し、火影様の命ですとアオは声高にカカシを牽制する。広げた手のひらには火影の公用印の模様がすうっと光りだした。
カカシは目を見張りアオにすまないと頭を下げて謝罪した。そりゃいきなり床下から出てくるわ首謀者だなんて言えばなあ、とイルカは口には出さずカカシの素早い反射的な行動を否定しなかった。
「.......サギは、何故今まで、」
脇に立つサギに僅かに顔を向け口籠もるカカシに、サギがうーんと苦笑いをしながら頭を搔く。説明が難しい。けれど言わなければカカシは納得しないだろう。
「ああその、ひとことで言えばおれは囮だ。」
木ノ葉の忍びが事件に関与したかもしれないという嫌疑で、人の目を自分に向けておく。別に協力者でも犯人でも構わなかった。
本気で心配しだろうカカシには悪いと思ったが外からは木ノ葉の里を狙う者達を、内からはそれに従属する反逆者を同時に炙り出す計画だったから誰にも漏らすわけにはいかなかった。葛藤で食欲が落ちた程だ。
アオは下忍にもなれなかった放蕩息子が改心したという設定で、ふらりと父親の元にやってきてその里でひっそりと暮らしていた。
「忍び里とは言ってもその里自体がひとつの、名もない国だったんですよ。だから商人で一般人である父は用心し、一度も子供も使えるような簡単な忍術さえ使いませんでした。」
カカシに向けて肩を竦め両手を広げて見せる。おどけてはいるが、草として完璧に演じられる父への尊敬は誰にも見てとれた。
「息子の僕はチャクラの量が多いからと勧められて木ノ葉のアカデミーに入学したけれど、結局卒業できただけで引導を渡されて父に引き取られた事になっています。」
アオは一応仕事はするが、ふらっと出掛けてしまういい加減な面も見せるようにしていた。
父の指示で若者の動向を探る。何やら一部がきな臭いという、一族でも上位の実力の父を信じて。
そして四年か五年程前の事、アオの近くに素行の良くない若者達が集まり始めた。適度に放蕩息子の名残りの一面を見せてやれば、そこに親近感を持ったらしい。
気付けば集団と呼べる程の人数になって、調子づいたかどこか忍びの里を襲おうかとの話が出始めていた。
アオが父に相談すれば他里の抜け忍も混じっているなら引き渡して恩を売る事ができると、自分の周囲の面々の中にいる抜け忍の一覧を投げて寄こした。諜報に動いた気配すらなかった父親に改めて敬意を払う。
集まってくるのは力不足でなかなか上には上がれない、結果素行不良で一族から絶縁され抜け忍となった者が意外と多かった。あとは力を過信して待遇に不満を持つ者。
朱に交われば赤くなる。集団心理も働いて、彼らは世の中が悪い自分達は正義だと曲がった思想を持つようになっていった。
好都合だ。良い流れになりゆっくりとアオを頂点に立たせるように仕向けた。素行に問題があったから下忍にもなれなかっだけ、実力は中忍以上だと謙虚にしながらも格の違いを見せ付けてやる。そうして半年あまりを掛け集団の統領となると、父を通じて木ノ葉の里に連絡を取った。
「アオが木の葉を襲うように仕向け、おれは同時にこちら側の不穏分子を炙り出していたんだ。」
サギの言う不穏分子の中には、あの研究室の二人も含まれている。なかなか見付け出せずに一般人四人の犠牲者を出してしまった事は自分のミスだと、眉間に皺を寄せてぎゅうと目を瞑った。
それは防ぎようもなかった、その事件があったからこそそれ以上の犠牲者が出ずにすんだとカカシがサギの両肩を掴む手に力を籠める。
自らを木ノ葉の不穏分子とし、以前からアオと連絡を取り合っていた木ノ葉の者に唆されて木ノ葉の中でのボスとなった。行方不明になったのは三代目火影の指示だ。それからカカシを動かし更にイルカにも手を出す。
カカシには暗部と上忍を動かせるし、イルカには目立たないが里内を守る事務系の者達を動かせるからだ。
「ま、正確には皆お前らの為に勝手に動いてくれるからな。二人ともどれだけ人望が厚いんだよ。」
カカシとイルカを指してサギは呆れたような顔をした。
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