気のおけない男友達との宴会はいつも羽目を外す。今日は抱かれてみたい男は誰だというお題が出た。
酔っ払ってるとそんな事も平気で言えるんだな、誰も疑問を持たない。
俺の番だ。えーっと……。
やっぱりあの人しかいない。
順に答えていく、その答えはなるほどと思わせる人達の名前が並んだ。勿論俺と同じ、あの人の名を挙げる者も少なくはない。
周りではそうかお前はガチムチ系かとか、意外だな頭脳派がいいのかとか結構盛り上がっている。
ひと通り回るとお題を出した奴がパンパンと手を打ち、皆の注目を集める。
抱かれたいと思った人が今一番憧れている人だ、と種明かししてまた更に盛り上がった。
男は征服欲があるから本当に好きな相手は男であっても抱きたいと思うんだ、とそいつが解説する。なるほどと皆納得。憧れなら確かに、その人の命令も素直に聞けるもんなあ。
ああ俺もあの人の部下になって活躍してみたい。身の周りの世話もいいかもしれない。
隊長、ご用意できました。なんていいなあ。ご苦労様、って受付で言われるみたいに言われたい。
隊長付きになってずっとついて回れたら、色んな表情のあの人が見られるんだろ。うわぁ……かっこいいんだろうなぁ。
おい、と肩を叩かれた。はっと意識を戻せばもう皆酔っ払ってベロベロだ。まあ俺もそこそこ酔って、ありえない妄想してたしな。
やがて解散となり、なんとか歩いて帰れる奴はそこかしこにぶつかりながらも帰っていく
俺もふらふらになりながら外に出て、涼しい夜風に当たってもう暫く酔いを覚ますかと近くの川辺に座り込んだ。何人か同じ事を考えていたらしいが、一人だけ大の字になり高らかな鼾を響かせて眠る男はアカデミーの同僚だ。
だが皆酒が足腰に来て自分の身体さえ持て余しているから、煩いがほったらかしだ。俺も当分は立てないだろう。
さっき店を出てくる時、確か時計は11時を指していた気がする。うん、ここで少し休めば日付けが変わる頃には部屋に帰れる。明日は遅刻せずに済みそうだ。
澄んだ空気できらきら綺麗な星空を見上げる。九月も半分終わってしまった。昼間はまだ暑さが残るが、夜はちょうどいい涼しさだ。
せんせ、と独特な言葉の切り方と声で暗闇でも話し掛けてきた相手が判る。
思いきり驚いた。だってさっきまで妄想していた人が、俺の隣でちょこんと膝を抱えてその膝に顎を乗せてこちらを見ているんだから。
うわー体温が感じられるほど近い、でも俺は動けない。動くって事は反対側に逃げるという大変失礼な行為だからだ。
何故だか頭の中で危険を知らせる非常ベルが鳴り響く。何が危険なんだろうなあ、強くて優しくて素敵な上忍が危険な筈はない。まあどうせ俺、酔ってて動けないからどうでもいいや。
ねえさっきさ、と更に近付いてきて俺は捕まってしまった。……腰に腕が回ってる……。
とうしよう、俺はどうしたらいい。憧れの人がこんなに密着して、一体何の罰ゲームなんだ。
焦ってたら話が続いているらしく、本当にそう思ってるのかと聞かれた。
ちょっとパニクった間の話は聞いてなかったけど、はいはいと適当に相槌を打ったらば本当ですかありがとうと俺の手を取り一瞬のうちにどこかに飛んだ。
……知らない誰かの部屋。と思ったらこの上忍の部屋だと。やっぱり凄え、なんてゴージャスなんだ。
温かいお茶を出されて酔いを覚まそうと微笑まれる。えっ、素顔?
顔を隠しててもかっこいいとは思っていたが、こんなに整った顔なら一流のモデルとして売れっ子になるだろうに。天は二物を与えちゃったんだなー羨ましいなー。
さっきの友人達とのやり取りを聞いてたんですか? あ、ええ、確かに貴方が俺の一番の憧れです……やだな本人を目の前にして恥ずかしいじゃないですか。ほらもう顔が熱いし汗だらだらですよ。
あ、ちょ、待って、なんで俺の服を脱がすんですか。汗をかいたなら風呂に? ありがとうございます大丈夫です、自分で脱げますから。
なんで貴方も脱ぐんですか。一緒に入って髪を洗って下さるんですか、いえいえそんな上忍にそんな事をさせられませんよ。いいから、っていやでも。
──ありがとうございました、まさかマンションで檜の風呂に入れるとは思いませんでした。ただその、浴槽に一緒に入るとも思いませんでしたけど。
どこに行くんですか。寝室? 俺、明日アカデミーがあるので失礼したいんですが。
いや確かに抱かれるなら貴方がいいって言いましたけど! でもあれは酒の席の話で!
待って今日誕生日だからお祝いをくれって、あと十分もないですよ無理無理今からプレゼント探せませんから、プレゼントは俺でいいって俺が良くないですよそんな泣きそうな顔されても、あっあっその手はやめ、あーっ!
……うん気持ちよかったよ、最高だったよ、もう骨抜きだよ。今更遅いけどひとことだけ言わせてくれ。
違う、そうじゃない。
酔っ払ってるとそんな事も平気で言えるんだな、誰も疑問を持たない。
俺の番だ。えーっと……。
やっぱりあの人しかいない。
順に答えていく、その答えはなるほどと思わせる人達の名前が並んだ。勿論俺と同じ、あの人の名を挙げる者も少なくはない。
周りではそうかお前はガチムチ系かとか、意外だな頭脳派がいいのかとか結構盛り上がっている。
ひと通り回るとお題を出した奴がパンパンと手を打ち、皆の注目を集める。
抱かれたいと思った人が今一番憧れている人だ、と種明かししてまた更に盛り上がった。
男は征服欲があるから本当に好きな相手は男であっても抱きたいと思うんだ、とそいつが解説する。なるほどと皆納得。憧れなら確かに、その人の命令も素直に聞けるもんなあ。
ああ俺もあの人の部下になって活躍してみたい。身の周りの世話もいいかもしれない。
隊長、ご用意できました。なんていいなあ。ご苦労様、って受付で言われるみたいに言われたい。
隊長付きになってずっとついて回れたら、色んな表情のあの人が見られるんだろ。うわぁ……かっこいいんだろうなぁ。
おい、と肩を叩かれた。はっと意識を戻せばもう皆酔っ払ってベロベロだ。まあ俺もそこそこ酔って、ありえない妄想してたしな。
やがて解散となり、なんとか歩いて帰れる奴はそこかしこにぶつかりながらも帰っていく
俺もふらふらになりながら外に出て、涼しい夜風に当たってもう暫く酔いを覚ますかと近くの川辺に座り込んだ。何人か同じ事を考えていたらしいが、一人だけ大の字になり高らかな鼾を響かせて眠る男はアカデミーの同僚だ。
だが皆酒が足腰に来て自分の身体さえ持て余しているから、煩いがほったらかしだ。俺も当分は立てないだろう。
さっき店を出てくる時、確か時計は11時を指していた気がする。うん、ここで少し休めば日付けが変わる頃には部屋に帰れる。明日は遅刻せずに済みそうだ。
澄んだ空気できらきら綺麗な星空を見上げる。九月も半分終わってしまった。昼間はまだ暑さが残るが、夜はちょうどいい涼しさだ。
せんせ、と独特な言葉の切り方と声で暗闇でも話し掛けてきた相手が判る。
思いきり驚いた。だってさっきまで妄想していた人が、俺の隣でちょこんと膝を抱えてその膝に顎を乗せてこちらを見ているんだから。
うわー体温が感じられるほど近い、でも俺は動けない。動くって事は反対側に逃げるという大変失礼な行為だからだ。
何故だか頭の中で危険を知らせる非常ベルが鳴り響く。何が危険なんだろうなあ、強くて優しくて素敵な上忍が危険な筈はない。まあどうせ俺、酔ってて動けないからどうでもいいや。
ねえさっきさ、と更に近付いてきて俺は捕まってしまった。……腰に腕が回ってる……。
とうしよう、俺はどうしたらいい。憧れの人がこんなに密着して、一体何の罰ゲームなんだ。
焦ってたら話が続いているらしく、本当にそう思ってるのかと聞かれた。
ちょっとパニクった間の話は聞いてなかったけど、はいはいと適当に相槌を打ったらば本当ですかありがとうと俺の手を取り一瞬のうちにどこかに飛んだ。
……知らない誰かの部屋。と思ったらこの上忍の部屋だと。やっぱり凄え、なんてゴージャスなんだ。
温かいお茶を出されて酔いを覚まそうと微笑まれる。えっ、素顔?
顔を隠しててもかっこいいとは思っていたが、こんなに整った顔なら一流のモデルとして売れっ子になるだろうに。天は二物を与えちゃったんだなー羨ましいなー。
さっきの友人達とのやり取りを聞いてたんですか? あ、ええ、確かに貴方が俺の一番の憧れです……やだな本人を目の前にして恥ずかしいじゃないですか。ほらもう顔が熱いし汗だらだらですよ。
あ、ちょ、待って、なんで俺の服を脱がすんですか。汗をかいたなら風呂に? ありがとうございます大丈夫です、自分で脱げますから。
なんで貴方も脱ぐんですか。一緒に入って髪を洗って下さるんですか、いえいえそんな上忍にそんな事をさせられませんよ。いいから、っていやでも。
──ありがとうございました、まさかマンションで檜の風呂に入れるとは思いませんでした。ただその、浴槽に一緒に入るとも思いませんでしたけど。
どこに行くんですか。寝室? 俺、明日アカデミーがあるので失礼したいんですが。
いや確かに抱かれるなら貴方がいいって言いましたけど! でもあれは酒の席の話で!
待って今日誕生日だからお祝いをくれって、あと十分もないですよ無理無理今からプレゼント探せませんから、プレゼントは俺でいいって俺が良くないですよそんな泣きそうな顔されても、あっあっその手はやめ、あーっ!
……うん気持ちよかったよ、最高だったよ、もう骨抜きだよ。今更遅いけどひとことだけ言わせてくれ。
違う、そうじゃない。
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