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綱手様は変革がお好きらしい。まあ現場としては大変ありがたいが、その分奉納舞いのような気紛れを起こされてはたまったもんじゃない。…うん、悪口じゃない、オレの個人的見解ね。
「じゃあ、頑張ってもらおうか。」
できうる限り長男の動く姿を撮影し、それを里に持ち帰ってイルカ先生に見てもらう。
一人になればどれだけ気を付けていても、一瞬でも癖が表れるだろう。本人には解らない事が、必ずある筈だ。
「二日いただけますか。」
「そうだね、でも必ず二人で動いて。その間に残り三人で村に協力者がいないかを探ろう。」
いたとしても、誰が協力者かなんて解るとも思えない。けれどそれは口に出してはならない事だ。四人も気合いの入らない自分を奮い立たせるように、大きく頷いた。
綱手様には鳥飼から連絡を頼んだ。チャクラの塊でありながら、忍びに絶対それを悟らせない鳥ーこれじゃあこいつはアカデミーに戻れないよなと納得しながら、上昇気流に乗った姿を見送った。
オレの目が追う鳥は右翼と左翼でバランスを取り、谷から巻き上げる突風にも負けずにひたすら里を目指して飛んでいく。ふと舞いの練習時の教官の言葉を思い出した。
比翼とは二羽の鳥の仲睦まじさを表す言葉だが、そうではなく一羽の鳥の左右の翼だと教官が教えたのは何故だろうか。オレとイルカ先生に、他に伝えたい事があったのだろうか。いやいや、今は任務に集中しなくては。
「協力者なんていませんよねえ。利害の一致する理由がある訳ないでしょう。」
とりあえず全員で長男の集落に向かう途中、一番若い奴が漏らしたその言葉にもう一人が反応した。
「利害か、それは盲点だった。」
呟いた今回一番年長の男が、どうするかと目で問うてくる。それはどうかとオレは首を傾げた。
「こっちの人数足りないでしょうよ。」
村人の総数は百人近い。乳幼児や動けない老人を除いても、その対象となる者は五十人を下らない。一人ずつに張り付く訳にはいかないのだ。
だが、と男が食らいついてくるからには捨てておけない。促せば他者を排斥するような村だからこそ、老衰で死にたければと脅す事もできるだろうと言う。家族を盾に取られれば、見張られ続ける一生でもその方がいいに決まっている。
「でもよ、一生脅されたままだと精神的な負担が大きいだろ。だから交換条件を出させて、相手と同等だと思わせるとかな。」
寧ろ相手が有利だと見せかけておいた方がいい、とゆっくり腕を組んで講義をするような口調に変わった。
「こちらはお前の秘密を握っている。いつでも里にたれ込む事ができるのだから、お前はこちらの言うことを聞かなければならない。と優位に立たせておくとしたら。」
忍びではあるが、怪我か病気でたいして術は使えなくなってしまった。それでも子供の使いのような事を押し付けられ嫌になって逃げてきたーとでも言えばいい。忍びを知らなければどうとでも嘘はつけると男は鼻で笑った。
なるほど、この村では簡単に通用しそうだな。
「…あんた、先生でもやってた?」
「おう、上忍師をな。」
どうりで解りやすい説明だ。オレは言葉が足らなくて、かつての部下の子供達にも怒られっぱなしだったけれど。
ビデオ撮りの二日間、こっちの三人が何の収穫もないって報告はしたくないよな。よし、協力者探しをやってやろうじゃない。
「三人で組んで一軒ずつ回るよ。得意分野を生かそう。」
「任せて下さい。」
こちらは地道な調査を得意とした暗号解読班の若い奴と、上忍師を経験した最年長の男、そしてオレの三人。
ビデオ撮りは鳥飼と、拷問のイビキのところから派遣された奴。他里の者を白状させる際、確たる証拠として提出する為にビデオを使うようになったとか。綱手様はそうして他里をゆするんだろうな。悪どい…いやいや手腕を絶賛してるんだ。
白眼がいれば長男のチャクラを探ってもらえたのだろうが、それは忍びがいますと教える事になる。いくら抑えても、忍び独特のチャクラを放出してしまうからだ。ビデオカメラって、本当に便利だな。
「便利ですけど、ただの道具ですから。忍びは忍びらしくあれと、いつもイビキさんは言ってます。」
頼りすぎても惑わされるだけで、正解には辿り着かない事もあるのだという。
最後は勘だ、と矛盾しているのもイビキらしい。
「行きます。終わるまで連絡しない方がいいですか。」
「だね、集合時間と場所を村の外に決めておけばいい。」
息のつまる二日間の始まりだ。
いるかどうかも知れない協力者をどうやって探すのか、オレには解らないから二人に任せた。
一日目は長男と接触した者をその度に追う。ビデオ班とすれ違うも、集中力を削がないように声は掛けない。
その夜一人ずつ接触した者の言動を確認していて、村長の娘の様子がおかしかったと暗号解読班の男が首を捻った。
「やたらと結婚式の話をしているんですよ。まずは家を建て直してからだというのに、間取りや内装の事は一切決めていないのも変でしょう。」
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