イルカの背中の大きな手裏剣が刺さった痕は、少し盛り上がったままではあるが綺麗に塞がっていた。
あれ以来、たまにナルトがイルカに尋ねる事がある。
ーねえ先生、背中の傷はもう痛まないの。おれは先生の為なら何でもするから、手にも足にもなるから。
気にするな、もう何ともないよ。と眉毛を下げた笑顔で答えながら、湿った時期や凍てつく寒さにうずくまるイルカをカカシは知っている。
ナルトも苦しかろう、イルカも苦しかろう。
それでも繋がりがあるだけましだ。
カカシにはイルカを縛りつけるものがない。だからもし遠く離れてしまえば、イルカがカカシを思い出すこともなくなってしまう。
どれだけ身体を穿ち快楽を植えつけても、痛みのように心身を蝕み捕らえることができはしない。
死の間際までイルカに忘れられないだろうナルトが、カカシは羨ましくてしかたがないのだ。
再手術を言い渡された、とイルカがしょげる。手足の痺れが現れていたのは気づいていたが、生活に支障はないと笑っていたからカカシ自身も多忙を理由にまともに相手をしてやれずにいた。
ーナルトが気にするだろうなぁ。
ぽつりと落とされた言葉に、カカシは自分のどろどろに渦巻く汚い心を知った。
オレが此処にいるのに、何故オレを無視するんだ。
もう駄目だ、ナルトを絞め殺してやりたい。あいつなんかにイルカを奪われたくない。
それはただの嫉妬で妄想で決して現実にはならないのだけれど、カカシは本気でそう思った。
カカシの心も傷ついていた。イルカの背中のようには塞がらない、かえって開いていくばかりで。
それでもイルカに嫌われたくなくて、大丈夫だよ一緒にいてあげると優しい恋人を演じる。
手術が終わり、成功を告げられた。けれどそれは医学的な意味で、一応と小さな声が被せられる。
ー神経の繋ぎ直しは完璧ですが、だからといって痺れが解消できるとは限りません。
その言葉通り、イルカの症状はいっとき治まったもののまた以前のようにぶり返した。
もう二度と、元に戻らなければいい。そうしたらイルカの側にいて全ての面倒をみられるのに。
強い願いが呪となったのだろうか、イルカの具合は徐々に悪くなるばかり。カカシはほくそ笑む。
ーごめんなさい。役に立たない俺を、どうか、捨てて。
何故そんなことを言う、本心ではないと解っていても言わないで欲しい。
そして傷心を抱えてナルトのところへ行くなら、許さない。
カカシは甘やかし甘やかし、時折突き放してイルカの恐怖を煽る。
ほうら、オレがいなくては貴方は寂しくて泣くでしょう。貴方にはオレしかいない、オレだけが貴方を支えられるんだ。
やっとイルカにすがられて、カカシの心の傷は醜くひきつれたまま塞がり始めた。
どれだけ泣いただろう。人に向けた笑顔の裏で、イルカはどれだけ血を吐いただろう。
新たに刻まれた背中の傷を、カカシは貴方だからいとおしいと頬擦りしてくれる。痕が消えなければいいと思う自分が嫌だ。
ーねえ先生、何でもするから、手足になるから。
とナルトがイルカを呼ぶ度にカカシの目が伏せられる。
カカシがナルトに張り合って自分の側にいる、という事に気づいた。ナルトを憎む限り、カカシはイルカを離さないのだとも知った。
この傷のお陰でカカシが側にいてくれるなら。と薬を全て捨てて、自分で調合した神経毒を代わりに飲み続ける。
ーねえ先生。
いつものナルトの呼び掛けに、カカシがいるから大丈夫だと言わない。イルカはただ、困ったような笑顔で笑うだけだ。
ーまた来るからな。
来るななんて言えないし、決して言わないだろう。
そうしてイルカは今日もナルトを盾にし、罠を張ってカカシを待つ。
ーごめんなあ、ごめんなあ。
涙を浮かべた寝言にカカシは薄く笑うのだ。
ゴミ袋から拾い上げた薬を手に持って。
あれ以来、たまにナルトがイルカに尋ねる事がある。
ーねえ先生、背中の傷はもう痛まないの。おれは先生の為なら何でもするから、手にも足にもなるから。
気にするな、もう何ともないよ。と眉毛を下げた笑顔で答えながら、湿った時期や凍てつく寒さにうずくまるイルカをカカシは知っている。
ナルトも苦しかろう、イルカも苦しかろう。
それでも繋がりがあるだけましだ。
カカシにはイルカを縛りつけるものがない。だからもし遠く離れてしまえば、イルカがカカシを思い出すこともなくなってしまう。
どれだけ身体を穿ち快楽を植えつけても、痛みのように心身を蝕み捕らえることができはしない。
死の間際までイルカに忘れられないだろうナルトが、カカシは羨ましくてしかたがないのだ。
再手術を言い渡された、とイルカがしょげる。手足の痺れが現れていたのは気づいていたが、生活に支障はないと笑っていたからカカシ自身も多忙を理由にまともに相手をしてやれずにいた。
ーナルトが気にするだろうなぁ。
ぽつりと落とされた言葉に、カカシは自分のどろどろに渦巻く汚い心を知った。
オレが此処にいるのに、何故オレを無視するんだ。
もう駄目だ、ナルトを絞め殺してやりたい。あいつなんかにイルカを奪われたくない。
それはただの嫉妬で妄想で決して現実にはならないのだけれど、カカシは本気でそう思った。
カカシの心も傷ついていた。イルカの背中のようには塞がらない、かえって開いていくばかりで。
それでもイルカに嫌われたくなくて、大丈夫だよ一緒にいてあげると優しい恋人を演じる。
手術が終わり、成功を告げられた。けれどそれは医学的な意味で、一応と小さな声が被せられる。
ー神経の繋ぎ直しは完璧ですが、だからといって痺れが解消できるとは限りません。
その言葉通り、イルカの症状はいっとき治まったもののまた以前のようにぶり返した。
もう二度と、元に戻らなければいい。そうしたらイルカの側にいて全ての面倒をみられるのに。
強い願いが呪となったのだろうか、イルカの具合は徐々に悪くなるばかり。カカシはほくそ笑む。
ーごめんなさい。役に立たない俺を、どうか、捨てて。
何故そんなことを言う、本心ではないと解っていても言わないで欲しい。
そして傷心を抱えてナルトのところへ行くなら、許さない。
カカシは甘やかし甘やかし、時折突き放してイルカの恐怖を煽る。
ほうら、オレがいなくては貴方は寂しくて泣くでしょう。貴方にはオレしかいない、オレだけが貴方を支えられるんだ。
やっとイルカにすがられて、カカシの心の傷は醜くひきつれたまま塞がり始めた。
どれだけ泣いただろう。人に向けた笑顔の裏で、イルカはどれだけ血を吐いただろう。
新たに刻まれた背中の傷を、カカシは貴方だからいとおしいと頬擦りしてくれる。痕が消えなければいいと思う自分が嫌だ。
ーねえ先生、何でもするから、手足になるから。
とナルトがイルカを呼ぶ度にカカシの目が伏せられる。
カカシがナルトに張り合って自分の側にいる、という事に気づいた。ナルトを憎む限り、カカシはイルカを離さないのだとも知った。
この傷のお陰でカカシが側にいてくれるなら。と薬を全て捨てて、自分で調合した神経毒を代わりに飲み続ける。
ーねえ先生。
いつものナルトの呼び掛けに、カカシがいるから大丈夫だと言わない。イルカはただ、困ったような笑顔で笑うだけだ。
ーまた来るからな。
来るななんて言えないし、決して言わないだろう。
そうしてイルカは今日もナルトを盾にし、罠を張ってカカシを待つ。
ーごめんなあ、ごめんなあ。
涙を浮かべた寝言にカカシは薄く笑うのだ。
ゴミ袋から拾い上げた薬を手に持って。
スポンサードリンク
コメントフォーム