「でさ、イルカ先生は今日休みなんだろ?」
「そうだけど、…なんで知ってるんだ。」
「報告に行ったら教えてくれた。」
農園の収穫の手伝いだから朝のうちにナルト達の任務は終了しており、当然報告にも行っていたのだ。イルカは一人寂しく寝てるぞと真実を包み隠さず教える優しい奴らばかりで、居留守を使う事すら叶わない。
「だから持ってきてくれたのか。ありがとう。」
本当はきっちりご飯が食べたいが、わざわざ一緒に食べようと持ってきてくれたのだから取り敢えずこれで腹を満たそうとイルカは西瓜を持ち上げた。
「暫く留守にしてたからまだ掃除してないんだ。いいか?」
話の途中ではあいと返事をしながらあっという間に中へと消えた三人は、早速台所でまな板と包丁を出そうとしてそれらがない事に気付いた。
「先生、どうやって切るのよ。」
サクラが何もない理由を聞かないのは、俺がカカシ先生の世話をした事を知ってるからだろう。
ほっとしたが、イルカはその間に起こった事を思い出して少し狼狽えた。せっかく風呂に入って気持ちを落ち着けたのに、子供達の前でカカシを意識した言動が出てしまいそうで怖い。かといってカカシを無視しても怪しく見えるーと大きく溜め息が出てしまった。
それを包丁がなくて困ったと勘違いし、サスケが助け船を出す。
「西瓜割りでもするか。」
ナルトに顎で示したのは、玄関に立て掛けてある天秤棒代わりの枝だ。最初は西瓜を棒に吊るしてナルトとサスケで担いでいたがバランスが取れずにどちらが悪いと罵り合いから掴み合いに発展し、西瓜が割れる前にと仕方なくカカシが持ってきたのだ。
少し切ればちょうどいい長さになった。アパートの二階の、玄関が並ぶ一直線の通路が即席の西瓜割り大会会場となる。
わあわあと賑やかな声に釣られ、アパートで暇をもて余す忍び達も顔を出してカカシが仲間に引き込んだ。恐縮しながらも仲間に加わった大人達の方が熱中し、気が付けば通路にござが敷かれて酒と食べ物も置かれて宴会に変わっていく。
西瓜が食べ尽くされた時点で子供達三人は満足して帰宅し、イルカとカカシは表の通りまで出てそれを見送った。
「カカシ先生、ありがとうございました。」
「いや、本当に農園でイルカ先生にもと言われたんですよ。喜んでいただけて良かったです。」
微笑み合うが、どこか空気がよそよそしい。カカシにはイルカに負い目があり、イルカにはカカシに遠慮があるからだ。
「もう少し、時間が欲しいですよね。」
考える時間が。
ぼそりと落とされた言葉にイルカは頷く。もう全て取り消せないから、自分自身を充分に納得させなければならない。これからの、カカシとの関係を。
「今日はもう帰ります。ただオレのチャクラが貴方へ流れ夜へ流れて封印術を安定させるという事、忘れないで。明日また、貴方がどこにいても会いに来ます。」
そうしてカカシはイルカの頬をひと撫でしてすぐ消えた。拒絶の言葉を聞かないように。
イルカが重い足を引き摺り階段を昇れば、人数は減ってござなども片付けられていた。
「よう、お前んちで続きするぞ。」
「おー、掃除してないから埃にまみれろ。」
アカデミーの同僚の一人が酒瓶を抱いて空いた片手でイルカを拘束し、通路を掃除する者達に主が来たぞと声を掛けた。たちまち部屋の中は男だらけとなり、扇風機一台で熱気を散らすのは無理があったがそれでも宴会は続く。
「イルカ、お前さ。」
控え目な声で話し掛けてきた男は、この中でもイルカに親しい方だ。
「はたけ上忍と、何がある。」
「え?」
一拍置いて続けた言葉に、イルカは返答のしようがなかった。
「最近急に仲良くしてて、なんか怪しいなあって言ってるんだけど。」
黙るイルカにまあ俺はどうでもいいけどさ、と男はへらっと笑った。
「…そんな事は。」
子供達の事があるからと、躊躇いながらイルカは言い訳を口にした。
あれだけ目立つ人としょっちゅう一緒にいれば、自分も観察の対象になるのだ。噂とは真実を無視して恐ろしく速く駆け回ってしまう。このままではカカシにとって迷惑な事になるのだろうとイルカが困った顔をすれば、ぽんぽんと背中を叩かれ慰められた。
「違うって、別にお前を責めてるんじゃない。あっちから近付いてんのは皆知ってるから。」
他人にはそう見えているのか…そうじゃないんだけど。でも俺が言い訳したら、かえって裏を読むんだろうな。
「子供達の事で色々あるのは知ってるさ、気にするな。」
夜の存在が隠せるなら、申し訳ないけどこの勘違いを利用させてもらおう。カカシ先生には後で謝っておかなきゃ。
ありがとうとイルカが男の肩を軽く抱くと、きつく抱き締め返された。見た目によらず大分酔っていたらしく、ちゅうと頬に吸い付かれてしまった。
それを他の者達に見られ、指を差されてげらげら笑われた。笑い上戸の向こうには泣き上戸もいる。
こんな平和な日常がずっと続けばいいと夜の為にカカシの為に、イルカはそっと思った。
「そうだけど、…なんで知ってるんだ。」
「報告に行ったら教えてくれた。」
農園の収穫の手伝いだから朝のうちにナルト達の任務は終了しており、当然報告にも行っていたのだ。イルカは一人寂しく寝てるぞと真実を包み隠さず教える優しい奴らばかりで、居留守を使う事すら叶わない。
「だから持ってきてくれたのか。ありがとう。」
本当はきっちりご飯が食べたいが、わざわざ一緒に食べようと持ってきてくれたのだから取り敢えずこれで腹を満たそうとイルカは西瓜を持ち上げた。
「暫く留守にしてたからまだ掃除してないんだ。いいか?」
話の途中ではあいと返事をしながらあっという間に中へと消えた三人は、早速台所でまな板と包丁を出そうとしてそれらがない事に気付いた。
「先生、どうやって切るのよ。」
サクラが何もない理由を聞かないのは、俺がカカシ先生の世話をした事を知ってるからだろう。
ほっとしたが、イルカはその間に起こった事を思い出して少し狼狽えた。せっかく風呂に入って気持ちを落ち着けたのに、子供達の前でカカシを意識した言動が出てしまいそうで怖い。かといってカカシを無視しても怪しく見えるーと大きく溜め息が出てしまった。
それを包丁がなくて困ったと勘違いし、サスケが助け船を出す。
「西瓜割りでもするか。」
ナルトに顎で示したのは、玄関に立て掛けてある天秤棒代わりの枝だ。最初は西瓜を棒に吊るしてナルトとサスケで担いでいたがバランスが取れずにどちらが悪いと罵り合いから掴み合いに発展し、西瓜が割れる前にと仕方なくカカシが持ってきたのだ。
少し切ればちょうどいい長さになった。アパートの二階の、玄関が並ぶ一直線の通路が即席の西瓜割り大会会場となる。
わあわあと賑やかな声に釣られ、アパートで暇をもて余す忍び達も顔を出してカカシが仲間に引き込んだ。恐縮しながらも仲間に加わった大人達の方が熱中し、気が付けば通路にござが敷かれて酒と食べ物も置かれて宴会に変わっていく。
西瓜が食べ尽くされた時点で子供達三人は満足して帰宅し、イルカとカカシは表の通りまで出てそれを見送った。
「カカシ先生、ありがとうございました。」
「いや、本当に農園でイルカ先生にもと言われたんですよ。喜んでいただけて良かったです。」
微笑み合うが、どこか空気がよそよそしい。カカシにはイルカに負い目があり、イルカにはカカシに遠慮があるからだ。
「もう少し、時間が欲しいですよね。」
考える時間が。
ぼそりと落とされた言葉にイルカは頷く。もう全て取り消せないから、自分自身を充分に納得させなければならない。これからの、カカシとの関係を。
「今日はもう帰ります。ただオレのチャクラが貴方へ流れ夜へ流れて封印術を安定させるという事、忘れないで。明日また、貴方がどこにいても会いに来ます。」
そうしてカカシはイルカの頬をひと撫でしてすぐ消えた。拒絶の言葉を聞かないように。
イルカが重い足を引き摺り階段を昇れば、人数は減ってござなども片付けられていた。
「よう、お前んちで続きするぞ。」
「おー、掃除してないから埃にまみれろ。」
アカデミーの同僚の一人が酒瓶を抱いて空いた片手でイルカを拘束し、通路を掃除する者達に主が来たぞと声を掛けた。たちまち部屋の中は男だらけとなり、扇風機一台で熱気を散らすのは無理があったがそれでも宴会は続く。
「イルカ、お前さ。」
控え目な声で話し掛けてきた男は、この中でもイルカに親しい方だ。
「はたけ上忍と、何がある。」
「え?」
一拍置いて続けた言葉に、イルカは返答のしようがなかった。
「最近急に仲良くしてて、なんか怪しいなあって言ってるんだけど。」
黙るイルカにまあ俺はどうでもいいけどさ、と男はへらっと笑った。
「…そんな事は。」
子供達の事があるからと、躊躇いながらイルカは言い訳を口にした。
あれだけ目立つ人としょっちゅう一緒にいれば、自分も観察の対象になるのだ。噂とは真実を無視して恐ろしく速く駆け回ってしまう。このままではカカシにとって迷惑な事になるのだろうとイルカが困った顔をすれば、ぽんぽんと背中を叩かれ慰められた。
「違うって、別にお前を責めてるんじゃない。あっちから近付いてんのは皆知ってるから。」
他人にはそう見えているのか…そうじゃないんだけど。でも俺が言い訳したら、かえって裏を読むんだろうな。
「子供達の事で色々あるのは知ってるさ、気にするな。」
夜の存在が隠せるなら、申し訳ないけどこの勘違いを利用させてもらおう。カカシ先生には後で謝っておかなきゃ。
ありがとうとイルカが男の肩を軽く抱くと、きつく抱き締め返された。見た目によらず大分酔っていたらしく、ちゅうと頬に吸い付かれてしまった。
それを他の者達に見られ、指を差されてげらげら笑われた。笑い上戸の向こうには泣き上戸もいる。
こんな平和な日常がずっと続けばいいと夜の為にカカシの為に、イルカはそっと思った。
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