そうか?ときょとんとしてあっさり返したのはカカシ。人望なんてないない、と身体の前で大きく手を振り笑ったのはイルカ。
「面白ぇなあ、これだけ性格が違うのによく二人でここまで上手く任務が進められたな。」
「いや、俺は何もしてないぞ。」
茶化すアオにイルカは真顔で言い返した。その通り、彼らは何もしていないのに周りが勝手に事件を起こしたり捕り物をしたり助けてくれたりと目まぐるしい。まあなとアオは苦笑いをし、今頃諸事解決とばかり煙管をくゆらす三代目火影を想像して誰にも聞こえない舌打ちをした。
自分が撒き餌の扱いをされた事にはイルカも気付いてはいた。
「じっちゃんも腹黒いからな、俺が呼び出されてカカシ先生もいた時になんとなく見当はついてたんだ。」
畳に胡座をかいてがっくりと項垂れたイルカは溜息をつき、顔を上げると自分は戦力にならないけれど理由を告げられずに動くのはきつかったなあと皆に向けて歯を見せて笑った。
「まあまあ、その分一般人を四人も犠牲にした事を三代目も悩むだろうから、相殺って考えてやってもいいんじゃないの。」
「おや、カカシは優しいなあ。」
サギが揶揄うようにぽんとカカシの肩を叩きほくそ笑んだ。怪しい。こいつが大人しく言うことを聞いたというなら、絶対に火影との裏取引がある筈だ。
「あ、俺さ、三代目に報告してくるわ。多分爺様の周りにはまだ俺の疑い晴れてないよな。」
サギは証拠となる不穏分子からの計画を記した手紙を腰のポーチから取り出し三人に見せると、立ち上がって縁側にイルカを呼んだ。
「トラップ、おれの幅だけ外せるだろ。」
「ええ、印を組みますからその隙に。」
どうぞと言いながら、印で両手が塞がっている為に顎でその場所を示す。サギは一瞬で姿を消した。
結局はサギとアオからの報告を受け、三代目火影の指示で動いたようなものだ。全てがどう繋がっているのか、駒となったイルカにはせいぜい八割ほどしか解っていない。
「とりあえずお役御免になれば俺はもういいです。あ、アオも風呂入ってこいよ。なんだか動く度に砂が落ちてそうだ。」
「はは、床下から来たからそうかもしれない。服は風呂場で洗って乾かすから気にするな。」
よいしよっとあまりの疲労で動けない身体を気合いで動かすと、アオはふらふらと風呂へ向かっていった。
残ったのはカカシとイルカだけ。
「慌ただしかったですね。」
カカシが座卓に肘を着き顎を乗せて力を抜く。言葉の割に平然としているように見えて、流石だなとイルカはその横顔を見詰めた。
「多分、俺が一番状況が把握できてないんだと思います。あとで報告書を読ませてもらうので細かく書いておいてくださいね。」
「えっ、オレが書くの?」
「そうでしたね、カカシ先生は細かく話してやるから誰かが書き取れってタイプですもんね。では三人でお願いします。」
そう言って啜った冷めた茶はもう冷たいと言っていいほどだ。だがそれが喉に気持ちいい。旧友にも会えて真相もほぼ解明され、イルカの興奮状態はまだ収まりきらないのだった。
「あ、カカシ先生はアオとサギさんの名前に気付きましたか。」
「名前?」
「アオサギですよ。」
「ああ鳥ね! でもサギの方が兄でしょ?」
だから気が付かなかったとカカシが首を捻る。解りませんよねとイルカが笑う。ほのぼのとして見えるのは、任務がほぼ終了して気が抜けたからかもしれない。
「生まれた時親父さんが嬉しくて舞い上がり、並んで寝ている二人の手のひらにアオとサギって書いたら実は生まれ順が逆だったという笑い話なんです。」
そっくりの双子でも違いが判る母親は産後の体調が良くなく、退院まで隔離されていた。帰宅して既に命名も済んでしまったと聞かされて一悶着あったのだ。
「まあお腹から出る順番が違っただけですし、順番てのは生きていく上での利便性の問題なだけですもんね。」
イルカの言葉に頷き、あの二人を見てたら羨ましくてとカカシはぼそりと漏らした。全くですと答えたイルカも、またカカシも子供のうちに両親を亡くして頼る兄弟も親戚もいないのだ。
「家族っていいよね。」
「いいですねえ。」
あーあ、結婚したいなぁ。
イルカが盛大な溜息とともに零した言葉を聞いたカカシが、勢いよくその顔を見た。そう思いませんかと見詰められ、見開かれたカカシの右目に浮かんだ戸惑いにイルカは気が付かなかった。
──そう思うのが普通だよねえ。
一人でも大して寂しさなど感じていないカカシはいつものように口先だけ羨ましがっていたのだが、イルカは切実らしい。アカデミーで幼子と触れ合いその家族も見ていれば余計にそう思うのだろう。
「……家族を作ることは難しくはないけどね。」
「え?」
「いや別に、羨ましいって独り言。」
あーさっぱりしたぁ、とアオが戻ってきた。言っていた通りに風呂場で服を手洗いし乾かしたらしい。
「面白ぇなあ、これだけ性格が違うのによく二人でここまで上手く任務が進められたな。」
「いや、俺は何もしてないぞ。」
茶化すアオにイルカは真顔で言い返した。その通り、彼らは何もしていないのに周りが勝手に事件を起こしたり捕り物をしたり助けてくれたりと目まぐるしい。まあなとアオは苦笑いをし、今頃諸事解決とばかり煙管をくゆらす三代目火影を想像して誰にも聞こえない舌打ちをした。
自分が撒き餌の扱いをされた事にはイルカも気付いてはいた。
「じっちゃんも腹黒いからな、俺が呼び出されてカカシ先生もいた時になんとなく見当はついてたんだ。」
畳に胡座をかいてがっくりと項垂れたイルカは溜息をつき、顔を上げると自分は戦力にならないけれど理由を告げられずに動くのはきつかったなあと皆に向けて歯を見せて笑った。
「まあまあ、その分一般人を四人も犠牲にした事を三代目も悩むだろうから、相殺って考えてやってもいいんじゃないの。」
「おや、カカシは優しいなあ。」
サギが揶揄うようにぽんとカカシの肩を叩きほくそ笑んだ。怪しい。こいつが大人しく言うことを聞いたというなら、絶対に火影との裏取引がある筈だ。
「あ、俺さ、三代目に報告してくるわ。多分爺様の周りにはまだ俺の疑い晴れてないよな。」
サギは証拠となる不穏分子からの計画を記した手紙を腰のポーチから取り出し三人に見せると、立ち上がって縁側にイルカを呼んだ。
「トラップ、おれの幅だけ外せるだろ。」
「ええ、印を組みますからその隙に。」
どうぞと言いながら、印で両手が塞がっている為に顎でその場所を示す。サギは一瞬で姿を消した。
結局はサギとアオからの報告を受け、三代目火影の指示で動いたようなものだ。全てがどう繋がっているのか、駒となったイルカにはせいぜい八割ほどしか解っていない。
「とりあえずお役御免になれば俺はもういいです。あ、アオも風呂入ってこいよ。なんだか動く度に砂が落ちてそうだ。」
「はは、床下から来たからそうかもしれない。服は風呂場で洗って乾かすから気にするな。」
よいしよっとあまりの疲労で動けない身体を気合いで動かすと、アオはふらふらと風呂へ向かっていった。
残ったのはカカシとイルカだけ。
「慌ただしかったですね。」
カカシが座卓に肘を着き顎を乗せて力を抜く。言葉の割に平然としているように見えて、流石だなとイルカはその横顔を見詰めた。
「多分、俺が一番状況が把握できてないんだと思います。あとで報告書を読ませてもらうので細かく書いておいてくださいね。」
「えっ、オレが書くの?」
「そうでしたね、カカシ先生は細かく話してやるから誰かが書き取れってタイプですもんね。では三人でお願いします。」
そう言って啜った冷めた茶はもう冷たいと言っていいほどだ。だがそれが喉に気持ちいい。旧友にも会えて真相もほぼ解明され、イルカの興奮状態はまだ収まりきらないのだった。
「あ、カカシ先生はアオとサギさんの名前に気付きましたか。」
「名前?」
「アオサギですよ。」
「ああ鳥ね! でもサギの方が兄でしょ?」
だから気が付かなかったとカカシが首を捻る。解りませんよねとイルカが笑う。ほのぼのとして見えるのは、任務がほぼ終了して気が抜けたからかもしれない。
「生まれた時親父さんが嬉しくて舞い上がり、並んで寝ている二人の手のひらにアオとサギって書いたら実は生まれ順が逆だったという笑い話なんです。」
そっくりの双子でも違いが判る母親は産後の体調が良くなく、退院まで隔離されていた。帰宅して既に命名も済んでしまったと聞かされて一悶着あったのだ。
「まあお腹から出る順番が違っただけですし、順番てのは生きていく上での利便性の問題なだけですもんね。」
イルカの言葉に頷き、あの二人を見てたら羨ましくてとカカシはぼそりと漏らした。全くですと答えたイルカも、またカカシも子供のうちに両親を亡くして頼る兄弟も親戚もいないのだ。
「家族っていいよね。」
「いいですねえ。」
あーあ、結婚したいなぁ。
イルカが盛大な溜息とともに零した言葉を聞いたカカシが、勢いよくその顔を見た。そう思いませんかと見詰められ、見開かれたカカシの右目に浮かんだ戸惑いにイルカは気が付かなかった。
──そう思うのが普通だよねえ。
一人でも大して寂しさなど感じていないカカシはいつものように口先だけ羨ましがっていたのだが、イルカは切実らしい。アカデミーで幼子と触れ合いその家族も見ていれば余計にそう思うのだろう。
「……家族を作ることは難しくはないけどね。」
「え?」
「いや別に、羨ましいって独り言。」
あーさっぱりしたぁ、とアオが戻ってきた。言っていた通りに風呂場で服を手洗いし乾かしたらしい。
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