10

10 イルカ
公表するとなると、三代目のじいちゃんにも言い聞かせなきゃいけない事がある。
…オレの裏の顔だ。
暗部さんとの関係は執務室でのじいちゃん繋がりのみで、トラップなど一切教えていない事にする。
でもなあ、オレの開発した物はカカシさんには判っちゃうだろうし。あ、聞かれたから教えてあげたんだって事に、…できるかなあ、するしかないだろうな。
他の関係各署にも釘は刺しとかないとな。まずはどこからだ?
慌てない、尻尾は出しちゃいけないんだ。オレはあくまで中忍、今の立場が一番居心地いい。
カカシさん。ずっとあなたの隣にいたいから、オレは脳はないけど鷹でもないけどとがってもいない爪なんだけど、隠します。
おいオレ、何に浸ってるんだ、さっさと動かなきゃ。

窓の外がうっすらと白んできた。かなり朝も早いが、無理矢理起き出してしまう。結局自分が言い出した事なのに、ゆうべは一睡もできなかったのはやはり決意が緩いからなんだろう。
冷凍しておいたご飯を鍋に溶いたインスタント味噌汁で少し煮込んで、猫まんまを朝食にする。振りかけた鰹節が湯気にひらひら舞うのが好きだ。
さあて脅迫か懐柔か、よーく考えよう。眠くて働かない、元から沸いた頭だけど。
「あ、おはようございますカカシさん。相変わらず玄関の鍵を千本で開けて入って来ましたね。」
くそ、何度鍵を変えても簡単に入りやがる。カードキーでも暗証番号を解除するなんて、アンタは何者だよ。…ああそれはトラップの範疇だ、オレが教えたんだっけ、オレの馬鹿。
「おっはよおぉ、マイハニー。」
「残念、朝ごはんはありません。」
待ち伏せだと思ってたから早目に支度して、逃げるルートを算段してたのに。
「早速一緒に出勤しながら公表しようと思ったの。」
アンタ頭に花が咲いてますって。それ、子どものアニメの河童だかなんだかみたいですよ。
オレはお気楽野郎を座らせて、目の前で禁止事項を書き出して見せた。年少の生徒と同じで、耳から入れると逆側に抜けてしまうからだ。
一、火影様に報告。まだ誰にも言わない。
二、火影様から公表してもらう。まだ誰にも言わない。
三、取材は必ず二人で受ける。記者からは個人的に物をもらってはいけない。話に乗るな!
四、嘘はつかない。これまでに至る経緯は正直に話すこと。
五、生活は今まで通り。公表したからと調子に乗って同居はしない。
「取り敢えず以上です。まだありますが、それは追々話す事にしましょう。」
カカシさんは一つ一つに文句を言うが、聞かないでいよう。主導権はオレが握る!
「んー何だか焦れったいけど、イルカ先生がそこまで言うなら我満します。けど臨機応変、ですよね?」
来たよ、この悪だくみ満載のナルトと同じ笑顔!
アンタ何をやらかす気なんだ、オレの新聞一面に写真付きで載る位輝かしい筈の未来を、苔だらけの日陰の裏道に突き落とすつもりかよ。
ともあれオレはカカシさんの腕を掴んで一緒に出勤し(気味悪くいきなり大胆だとか身をくねらせて言うが、会う人全員に勝手に話されても困るからだ。さっきの約束なんてオレの気休めにしかすぎない)、火影様に報告するべく執務室へ入った。
「火影様、お話が。」
ゆうべの内に連絡はしておいたので、三代目はいつもより一時間は早くおいでになっていた。なんせ五分で済む話じゃないからな。
「イルカ、最近何だか妙な噂を耳に挟んだのだがな。」
ちろりとカカシさんにうろんげな眼差しをくれる三代目にそれですよ、とオレはうなづいた。
話は早い。
「という事で、お願いします。」
はしょったらうん、で終わった。
知ってんの? 三代目、どこまで知ってんの?
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