オレの隣に座りたい? 空いてるなら構わないよ。

昔から変わらずカカシは素っ気なく、拒みはしないが歓迎もしない。
側にいればいつか私自身を認識してくれるから、と必死になって話し掛けて上の空の返事を返されても誰もそれに気付かない。
そして隣に座る回数が重なれば、自分はカカシにとって特別な枠に納まったのだと勘違いする。

だったらそんなの何十人いるかしら、と紅が呟いた。さあねえ、とアスマは興味なさそうに溜め息で返事をする。

いちいち説明しなきゃ解らないんでしょうね。
あいつが誰一人として、隣に座った奴の名前も顔も覚えてねえ事に気付きもしねえでなあ。

アスマ、紅、ここいい?

カカシ自らが声を掛けて座るのはこの二人の隣だけ。
だがカカシの隣に座れた者達は、自分も同じ立場だとまた勘違いして二人にも話し掛ける。
話し掛けられてもそれほど二人は厭わないけれど、カカシの事を根掘り葉掘り尋ねられることには少々うんざりしている。

最近はあの中忍が来なくてせいせいしますね。
隣に座れるのは許された私達だけだというのに、なんて図々しいんでしょうね。

彼が遠慮をしているのが解らない奴らばかりで、と紅は怒りを通り越して呆れていた。

いつ気付くの?
お前の言うとおり、説明しなきゃわかんねえんだろう。
カカシは何を考えているのかしら?
何も考えちゃいねえよ。あいつしか目に入らねえから。

あ、イルカ先生。ねえこっちに来て座って。

カカシの両隣は空いてはいないのに。
邪魔なんだよと言う視線にたじろいだイルカの手を取ったカカシは、座ったままで繋いだ手をぐいと引いた。

あなたの席はここ。

向かい合わせに膝の上に座らせて、蕩けるような笑みと声をイルカに向けた。

隣なんて誰でも座らせてやるけどね、ここはあなただけの特等席なの。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。