気がつけば彼が六代目火影となられ、私は一人取り残された気分でおりました。二人で足並みを揃えて歩んできた、と思っていたのは私だけだったのかと。
でも仕方のないことです。彼はそれだけ素晴らしい方なのですから、私は少しでもお力になれれば幸せだと思うようにしました。
就任式という一大儀式には五大国の上層部の方々がお集まりになるので、私ども里の中を取り仕切るいわゆる内勤の者達は、ふた月ばかりは一日を二交代制で準備に追われておりました。
全てが初めてのことで手際も悪く、皆殆ど家には帰れず次第に過労に倒れる者が出て参りました。
何がそんなに忙しかったのかと?
まずご招待の方々への連絡、出欠確認は出向かなければ失礼ですので親書を携えて皆で持ち回り、各地を訪問いたしました。
それと並行して、ご出席の方々に提供するお宿も手配しておりました。
一番気を使いましたのがこちらでございますが、大戦の被害者の方々の各国合同慰霊祭も執り行いたいと六代目様が仰られた為に、ご遺族への招待状も作成し届けてもおりました。
また五代目様は博打の旅にお出掛けになりたかったようですが、引き継ぎもございますので就任式が終了する迄はと里に留める見張りに、何故か私が付くようになりました。
そうして動くことができなくなると、司令塔になり毎日各所への仕事の割り振りをするのもいつの間にか私の役目になりまして。
ええ、何とかやっておりましたが全ての目処がたって気が抜けたのでしょうか、最後に私も倒れてしまいました。
寝返りを打とうとして、私は点滴の針の痛みで目が覚めました。消毒薬の匂いに、やっぱり病院かぁと意味もなく笑ってしまいました。
朦朧とした頭で目の前の人物に話し掛け、いきなり鼻を摘ままれて覚醒したのですが、その方は六代目様でございました。
私は三代目と呼んでしまったようなのです。ですが、笠と白い装束ですから無理もないと思いませんか。
六代目様はふた月も私と顔を合わせなかったことで、病人の私に枕元で半時ばかり愚痴を溢しておられました。何故会いに来ないとか、何故家にいないとか。
そして仰ることに、これからも側に居てほしいと。二人三脚は一人ではできないと、私の手を取り涙されたのでございます。
あの、もう宜しいでしょうか。今日は六代目火影様の就任式でございましょう、私などに無駄な時間をお使いにならなくても…。

はーいこれにて奥方様の会見は終了いたしまーす。各局各社の方々、お疲れ様でしたー。
あ、奥方様の指輪は撮影できましたかあ。えー撮り忘れたんですか、じゃあワンショットだけですよー、イルカ先生左手の甲を見せてくださーい。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。