二日目
お相手にあなたを認識してもらえたら、次のステップに進んでみましょう。
会話をします。投げて返して、を最低でも五回できたら成功です。
その為に内容はよく考えましょう。自分の事で構いません、お相手の興味を引くような楽しいお話はありませんか。
但し、楽しいからといってもご自分の趣味のお話は五割程度に押さえてください。お相手に口を挟ませずに話し続けるなどはもってのほかです。それではお相手に失礼ですし、あなたへの興味も削がれてしまうでしょう。
ともかく共通の話題はお二人を身近に思わせるということを覚えていてくださいね。また会うための布石です。
「自分の事でねえ。」
カカシは悩んだ。任務の話は殺伐としたものばかりだ、返事なんか返らずすぐさま逃げてしまうだろう。
女が寄ってくるのをいかにかわすかなんて、殴られるだけだし。
男に迫られたってのも笑い話にもならないし。
太陽がだいぶ頭上に昇ってきた時間だというのに、のんびりと七班の集合場所に向かいながらぼうっと辺りを見回す。
散歩中の犬がカカシに尾を振りながら挨拶をしてきたのに、ようと手を上げて返した。
撫でてやりたいが、殆どの飼い主が胡散臭いカカシに犬を近付けたがらない。里を長らく留守にしていたために、まだカカシは人々に知られていないのだ。
二匹目の犬は飛び上がって喜んだが、首輪に繋がる紐が邪魔をしてカカシに近寄れない。
犬は飼い主を見上げて悲しそうに、くうんと鳴いた。犬と見詰め合った飼い主の初老の男は、手元の紐を緩めて犬の好きなようにさせた。
「随分好かれておりますなあ。」
カカシの周りをぐるぐる回りながら飛び跳ねる犬に笑う。
「あー、犬を使役に使っていますから、匂いがするのでは。」
使役に、と言ってからカカシはしまったと思った。愛犬家には犬を家族同様に思う人が多い。忍びが犬をどう使うのか知る人は、きっとカカシを非難するだろう。
「大事にしてらっしゃるようだ。犬達も本望でしょうね。」
思わぬ言葉が返り、カカシは目を丸くした。
実は孫息子が中忍になったばかりで、忍犬使いのカカシの話を聞かされていたのだと言う。
カカシは先の任務で直接面倒を見ていた少年を思い出した。
ああ、いつか忍犬を使いたいからと言って俺の部下を願い出た奇特な子ね。
自分でも外れた性格だと承知しているから、何も得るものはなくて気の毒だと言っておいたのだが。
「孫が尊敬するお方にお会いできて光栄でございます。今後とも宜しくお願い致します。」
少年の祖父に深々と頭を下げられてカカシも腰を真横まで折りながら、ちょっと涙が出そうで顔を上げたくないと思った。
まだカカシにじゃれたい犬を引きずりながら、何度も振り返り頭を下げる飼い主が去るのを見送っていると。
「カカシ先生、ありがとうございます。」
後ろから掛けられた声に飛び上がった。イルカだと認識し、カカシは慌てて挙動不審になる。手足が勝手にあちらこちらに動いて変な踊りを踊るようだ。
驚かせました、とイルカが恥じらいながら笑っていた。
「べべ、別に、」
泣きたい。イルカにカッコ悪い姿を見せてしまった。
「あの子は私が三年前に卒業させました。頭のよい子でしたが、だからこそ目標が見付けられずにずっと悩んでいたんです。」
中忍になっても惰性で任務に就きそうだから、と三年も下忍のままでいたそうだ。この春先には辞めようかとイルカに相談していて、火影にも引き止められていた程の子らしい。
三ヶ月前にカカシが引き受けた任務に同行し、感銘を受けたという。上忍師といえど通常の任務の指揮官にもなるのだ。
カカシも暗部を脱退して初めての通常の大部隊の隊長だったから、少し気合いが入っていただろうが特別何をしたという記憶はなかった。
ひと月前に特例で中忍に昇格したならば相当優秀なのだろう、とカカシは少年を思い出して頷いた。
「確かに、打てば響くような聡明な子でしたね。」
その言葉にイルカは自分が誉められたように目を輝かせ、顔一杯に笑った。カカシの動悸は最高潮、鼻血もしぶきを上げるかもしれない。
落ち着け!と拳を握る。
「私の最初の卒業生なんです。といっても新任の年だったから、最高学年の一番楽なクラスを持たせていただいたのですが。」
いやいや先生、十九才で新任って貴女も優秀すぎますよ。アカデミーは教師になるまでが上忍昇格試験より難しい筈です。
とカカシはイルカを眩しそうに見詰めた。
「あ、じゃあ今度あいつの話をしましょうか。」
ふと思い付くと、この機会を逃しちゃならないとカカシは慌てて誘う。はい是非と嬉しそうにうなづいたイルカは、お使いの和菓子の箱をしっかり抱えてポニーテールを振りながら急ぎ足で火影の元へ向かった。
暫くそれを見送った後、カカシはスキップで部下達との集合場所に着いてサクラに敵の術に掛かったのかと心配されていた。
お相手にあなたを認識してもらえたら、次のステップに進んでみましょう。
会話をします。投げて返して、を最低でも五回できたら成功です。
その為に内容はよく考えましょう。自分の事で構いません、お相手の興味を引くような楽しいお話はありませんか。
但し、楽しいからといってもご自分の趣味のお話は五割程度に押さえてください。お相手に口を挟ませずに話し続けるなどはもってのほかです。それではお相手に失礼ですし、あなたへの興味も削がれてしまうでしょう。
ともかく共通の話題はお二人を身近に思わせるということを覚えていてくださいね。また会うための布石です。
「自分の事でねえ。」
カカシは悩んだ。任務の話は殺伐としたものばかりだ、返事なんか返らずすぐさま逃げてしまうだろう。
女が寄ってくるのをいかにかわすかなんて、殴られるだけだし。
男に迫られたってのも笑い話にもならないし。
太陽がだいぶ頭上に昇ってきた時間だというのに、のんびりと七班の集合場所に向かいながらぼうっと辺りを見回す。
散歩中の犬がカカシに尾を振りながら挨拶をしてきたのに、ようと手を上げて返した。
撫でてやりたいが、殆どの飼い主が胡散臭いカカシに犬を近付けたがらない。里を長らく留守にしていたために、まだカカシは人々に知られていないのだ。
二匹目の犬は飛び上がって喜んだが、首輪に繋がる紐が邪魔をしてカカシに近寄れない。
犬は飼い主を見上げて悲しそうに、くうんと鳴いた。犬と見詰め合った飼い主の初老の男は、手元の紐を緩めて犬の好きなようにさせた。
「随分好かれておりますなあ。」
カカシの周りをぐるぐる回りながら飛び跳ねる犬に笑う。
「あー、犬を使役に使っていますから、匂いがするのでは。」
使役に、と言ってからカカシはしまったと思った。愛犬家には犬を家族同様に思う人が多い。忍びが犬をどう使うのか知る人は、きっとカカシを非難するだろう。
「大事にしてらっしゃるようだ。犬達も本望でしょうね。」
思わぬ言葉が返り、カカシは目を丸くした。
実は孫息子が中忍になったばかりで、忍犬使いのカカシの話を聞かされていたのだと言う。
カカシは先の任務で直接面倒を見ていた少年を思い出した。
ああ、いつか忍犬を使いたいからと言って俺の部下を願い出た奇特な子ね。
自分でも外れた性格だと承知しているから、何も得るものはなくて気の毒だと言っておいたのだが。
「孫が尊敬するお方にお会いできて光栄でございます。今後とも宜しくお願い致します。」
少年の祖父に深々と頭を下げられてカカシも腰を真横まで折りながら、ちょっと涙が出そうで顔を上げたくないと思った。
まだカカシにじゃれたい犬を引きずりながら、何度も振り返り頭を下げる飼い主が去るのを見送っていると。
「カカシ先生、ありがとうございます。」
後ろから掛けられた声に飛び上がった。イルカだと認識し、カカシは慌てて挙動不審になる。手足が勝手にあちらこちらに動いて変な踊りを踊るようだ。
驚かせました、とイルカが恥じらいながら笑っていた。
「べべ、別に、」
泣きたい。イルカにカッコ悪い姿を見せてしまった。
「あの子は私が三年前に卒業させました。頭のよい子でしたが、だからこそ目標が見付けられずにずっと悩んでいたんです。」
中忍になっても惰性で任務に就きそうだから、と三年も下忍のままでいたそうだ。この春先には辞めようかとイルカに相談していて、火影にも引き止められていた程の子らしい。
三ヶ月前にカカシが引き受けた任務に同行し、感銘を受けたという。上忍師といえど通常の任務の指揮官にもなるのだ。
カカシも暗部を脱退して初めての通常の大部隊の隊長だったから、少し気合いが入っていただろうが特別何をしたという記憶はなかった。
ひと月前に特例で中忍に昇格したならば相当優秀なのだろう、とカカシは少年を思い出して頷いた。
「確かに、打てば響くような聡明な子でしたね。」
その言葉にイルカは自分が誉められたように目を輝かせ、顔一杯に笑った。カカシの動悸は最高潮、鼻血もしぶきを上げるかもしれない。
落ち着け!と拳を握る。
「私の最初の卒業生なんです。といっても新任の年だったから、最高学年の一番楽なクラスを持たせていただいたのですが。」
いやいや先生、十九才で新任って貴女も優秀すぎますよ。アカデミーは教師になるまでが上忍昇格試験より難しい筈です。
とカカシはイルカを眩しそうに見詰めた。
「あ、じゃあ今度あいつの話をしましょうか。」
ふと思い付くと、この機会を逃しちゃならないとカカシは慌てて誘う。はい是非と嬉しそうにうなづいたイルカは、お使いの和菓子の箱をしっかり抱えてポニーテールを振りながら急ぎ足で火影の元へ向かった。
暫くそれを見送った後、カカシはスキップで部下達との集合場所に着いてサクラに敵の術に掛かったのかと心配されていた。
スポンサードリンク