「待ってください、何の事やら。」
翌日、イルカは綱手に大机の件についての説明を求めた。すると綱手は、また机を割らんばかりの勢いで両手を付き頭を下げ、イルカに懇願したのだ。
「頼むから、もう諜報で外に出ないでくれ。」
「いやぁ、アタシは隊長ですし、元より綱手様の命令ですから何を今更。」
イルカがのんびりと答えれば、綱手は頭を下げたままもう嫌なんだよ、と溜め息を落とした。いったい何だ、とイルカは嫌な予感に胸を押さえた。
イルカが諜報で里を出ている間、カカシが毎日のように執務室に顔を出して行き先を確かめていたのだという。危険じゃないのか、暁は自分でも倒すためのデータがないから心配だと。だからデータを収集するために行ってるんだよ。それが危険じゃないですか。と綱手は堂々巡りに我慢できずに、大机を手刀一刀で資源ごみにしてしまったのだ。
どういう事? カカシ先生は火の国にいるのに任務は大丈夫なの? アタシは何かやらかした?
理解できないイルカを置いたまま、言いたい事を言えたと綱手は少し明るい顔になった。
「あたしはねえ、あいつの小さい頃を知ってるからね。」
ああそうだ、そんな繋がりがあったと聞いた、とイルカは頷く。カカシも綱手に世話になったと言っていた。
生きているだけで楽しい筈の少年期を暗部ですごさせたのは、サクモの自殺の件で身心共に傷つけられるだろうカカシを守るためだった。だが結果として暗部で自我を崩壊させては、それが正解だったのかは判らない。
しかし、火影様達がカカシが人であれと心を砕いてくれたから、根底は揺るがずに今のカカシが出来上がったのではないか―。
そうイルカが言えば、綱手は本当に嬉しそうに笑った。
「お前はよく見ているね。だからカカシが懐くんだろうね。」
犬? と首を傾げてイルカはそんなに親しくないですけど、と言う。
そうだイルカも距離の取り方が解らない奴だ、と綱手とシズネは顔を見合わせた。戦場で未知の敵に恐怖を感じないのか、先頭を切る。自分が死ぬ事は構わないが、親しい人の掠り傷にすらパニックに陥る。
「とにかく、もう暫くは情報も得られないから中にいるんだよ。」
アカデミーも完全に再開するし。
施設の補修も終わり、高学年だけ再開していた授業が低学年にも拡大されると決定したのだ。
大机の事も忘れて喜んで仲間達に報告に行くイルカに、綱手はしてやったりと頷いた。
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