もう今年も一ヶ月経ったなんて信じられない。もう二月に入ったなんて信じられない。
ていうか、あたしが火影屋敷に住んでいるって事が信じられない！
……ふとね、掃除の合間にひと息ついて座った時にカレンダーを見て思ったの。
何をって？
二月一日に大きな赤丸が付けられているでしょ。で、その下に一ヶ月記念日ってあたしのじゃないきったない字で書いてあって。え、意味が解らない？
あたし、一月一日に結婚したのよね。だから二月一日は一ヶ月記念日なの。
そう結婚よ、誰か他人と夫婦になるやつ！
自分でもいまだに信じられないんだけど、左手の薬指には結婚指輪なんてものが嵌められてるから何かの作業のついでに目に入るこれを見て、ああ本当に結婚したんだあと一日に何回も一人で納得してるわけ。一ヶ月間、毎日ね。
それにあの人もちゃんと同じデザインの指輪を左手の薬指に嵌めていてくれるの、嬉しいけど凄く凄く恥ずかしい。いや自意識過剰って解ってるんだけど、夫婦ってしかも新婚って、その……やることやってますって公言してるみたいじゃない。
仕事中に欠伸をしただけで、毎晩お盛んなんですねってあの人言われたらしいの。違うわよ、膨大な量の書類に目を通すだけでも大変だから疲れるの。
殆ど毎晩帰ってきてからあたしが横になったあの人の身体を足で踏んづけて、ごりごりに固まった肩から腰までをマッサージしてあげてるんだから。あたし身体が小さいし力がないから、あの人に跨がって指で揉んでも全然効かないんだって。
でも火影様の背中を踏んづけてるなんて、絶対怒られるから誰にも言えないじゃない。だから今度マッサージチェアを買いましょうって言ったらね、それだけでもうオレの世話は飽きたんだ嫌われたんだってちょっとべそをかいて口を尖らせちゃって。アカデミーの子供かよって笑うところだったわ。笑ったら余計に機嫌悪くなるから我慢したけどね。いい大人が甘えん坊なの、ホントに可愛いわよ。
あのさ、お付き合いを始めて清いまま半年くらい経った頃、あたしじゃない人とスキャンダルが持ち上がったじゃない。あの時は相手が何もかもあたしより数段格上で、写真もバンバン撮られてたからあたしだってこりゃ気まぐれだったかってちょっとがっかりしたわよ。え、まあ……かなり、泣いたけど。
うん、あれねー。あれが切っ掛けで結婚したわけだけど、あの騒ぎは思い出すだけで疲れるわ。
言い訳が面倒だから実力行使だって、いくらなんでも火影のやることじゃないわよ。仕事中のあたしの手を引っ張って何処へ行くかと思えば中心街のホテルにまだ明るい夕方に入って、翌日べったりくっついて昼頃出てくるってベタな事を……、わざとにしても馬鹿よねえ。え？ あの時は何もないわよ、だって完徹二日の後であの人ベッドに転がったらすぐ鼾をかいて寝ちゃったもの。ひと晩ね！
翌日ホテルを出るなりカメラとマイクを突き付けられて揉み合って、あたしリポーターに押し倒されてこんなところで死ぬのかって本気で思ったわよ。
それをあの人があたしを抱き上げてーーあれ姫抱きじゃないわよね、子供の抱っこだわ。後で女性雑誌の写真を見て友達皆大笑いしたの。
うんそうあの時が一番かっこ良かったのよねえ、この人がオレの嫁さんだって言い放って颯爽と歩き出して。記者達が黙って道を開けるの、凄く爽快だったわよ。
問題はあたしの間抜けな顔よ。プロポーズされてないのにそう言われたんだから、へっ？て口を開けて呆然としてたの。まあ記者の大群に驚いた事にされたからいいけど。
ただねえ、婚姻届の文字は確かにあたしなんだけど、何度思い出しても書いた覚えがないのよ。
暮れ正月は火影が率先して休みを取らないと部下達も困るでしょってうちに転がり込んできて、元日に届け出用紙を書けって迫ってきたけどあたし二日酔いで何も覚えてないの。判子だって職員室の机に入れっぱなしの筈なのに、あたしはちゃんと名前を書いて判子を押したってあの人言うし。
それから善は急げってにっこり笑って、役所に届けに行って戻るまでは多分五分と掛かってない筈よ。そこだけ何となく覚えてるの……まさか幻じゅ、いやいやまさかね。
でも、何かというとあの男前の顔に誤魔化されてる気がするのよね。
最初からあの顔をどアップで見せられてひたすら迫ってくるでしょ、あたしが面食いだって周りから聞いて。
でも面食いって言っても色々タイプがあるじゃない。美少年とかロマンスグレーとか、マッチョとか。たまたまあたし、初恋の子がこうなったら良いなーって思ってた顔があの人そのもので、おまけに火影になっちゃって性格も良くて、あたしにだけ甘えん坊で。
なによ、目を背けないでよパックン！
「夫婦喧嘩だけじゃなくて、のろけ話も犬は喰わんわ。それから実はお前ら初恋同士だったなんて、今更言うことでもないよの。」
ていうか、あたしが火影屋敷に住んでいるって事が信じられない！
……ふとね、掃除の合間にひと息ついて座った時にカレンダーを見て思ったの。
何をって？
二月一日に大きな赤丸が付けられているでしょ。で、その下に一ヶ月記念日ってあたしのじゃないきったない字で書いてあって。え、意味が解らない？
あたし、一月一日に結婚したのよね。だから二月一日は一ヶ月記念日なの。
そう結婚よ、誰か他人と夫婦になるやつ！
自分でもいまだに信じられないんだけど、左手の薬指には結婚指輪なんてものが嵌められてるから何かの作業のついでに目に入るこれを見て、ああ本当に結婚したんだあと一日に何回も一人で納得してるわけ。一ヶ月間、毎日ね。
それにあの人もちゃんと同じデザインの指輪を左手の薬指に嵌めていてくれるの、嬉しいけど凄く凄く恥ずかしい。いや自意識過剰って解ってるんだけど、夫婦ってしかも新婚って、その……やることやってますって公言してるみたいじゃない。
仕事中に欠伸をしただけで、毎晩お盛んなんですねってあの人言われたらしいの。違うわよ、膨大な量の書類に目を通すだけでも大変だから疲れるの。
殆ど毎晩帰ってきてからあたしが横になったあの人の身体を足で踏んづけて、ごりごりに固まった肩から腰までをマッサージしてあげてるんだから。あたし身体が小さいし力がないから、あの人に跨がって指で揉んでも全然効かないんだって。
でも火影様の背中を踏んづけてるなんて、絶対怒られるから誰にも言えないじゃない。だから今度マッサージチェアを買いましょうって言ったらね、それだけでもうオレの世話は飽きたんだ嫌われたんだってちょっとべそをかいて口を尖らせちゃって。アカデミーの子供かよって笑うところだったわ。笑ったら余計に機嫌悪くなるから我慢したけどね。いい大人が甘えん坊なの、ホントに可愛いわよ。
あのさ、お付き合いを始めて清いまま半年くらい経った頃、あたしじゃない人とスキャンダルが持ち上がったじゃない。あの時は相手が何もかもあたしより数段格上で、写真もバンバン撮られてたからあたしだってこりゃ気まぐれだったかってちょっとがっかりしたわよ。え、まあ……かなり、泣いたけど。
うん、あれねー。あれが切っ掛けで結婚したわけだけど、あの騒ぎは思い出すだけで疲れるわ。
言い訳が面倒だから実力行使だって、いくらなんでも火影のやることじゃないわよ。仕事中のあたしの手を引っ張って何処へ行くかと思えば中心街のホテルにまだ明るい夕方に入って、翌日べったりくっついて昼頃出てくるってベタな事を……、わざとにしても馬鹿よねえ。え？ あの時は何もないわよ、だって完徹二日の後であの人ベッドに転がったらすぐ鼾をかいて寝ちゃったもの。ひと晩ね！
翌日ホテルを出るなりカメラとマイクを突き付けられて揉み合って、あたしリポーターに押し倒されてこんなところで死ぬのかって本気で思ったわよ。
それをあの人があたしを抱き上げてーーあれ姫抱きじゃないわよね、子供の抱っこだわ。後で女性雑誌の写真を見て友達皆大笑いしたの。
うんそうあの時が一番かっこ良かったのよねえ、この人がオレの嫁さんだって言い放って颯爽と歩き出して。記者達が黙って道を開けるの、凄く爽快だったわよ。
問題はあたしの間抜けな顔よ。プロポーズされてないのにそう言われたんだから、へっ？て口を開けて呆然としてたの。まあ記者の大群に驚いた事にされたからいいけど。
ただねえ、婚姻届の文字は確かにあたしなんだけど、何度思い出しても書いた覚えがないのよ。
暮れ正月は火影が率先して休みを取らないと部下達も困るでしょってうちに転がり込んできて、元日に届け出用紙を書けって迫ってきたけどあたし二日酔いで何も覚えてないの。判子だって職員室の机に入れっぱなしの筈なのに、あたしはちゃんと名前を書いて判子を押したってあの人言うし。
それから善は急げってにっこり笑って、役所に届けに行って戻るまでは多分五分と掛かってない筈よ。そこだけ何となく覚えてるの……まさか幻じゅ、いやいやまさかね。
でも、何かというとあの男前の顔に誤魔化されてる気がするのよね。
最初からあの顔をどアップで見せられてひたすら迫ってくるでしょ、あたしが面食いだって周りから聞いて。
でも面食いって言っても色々タイプがあるじゃない。美少年とかロマンスグレーとか、マッチョとか。たまたまあたし、初恋の子がこうなったら良いなーって思ってた顔があの人そのもので、おまけに火影になっちゃって性格も良くて、あたしにだけ甘えん坊で。
なによ、目を背けないでよパックン！
「夫婦喧嘩だけじゃなくて、のろけ話も犬は喰わんわ。それから実はお前ら初恋同士だったなんて、今更言うことでもないよの。」
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